私たちは、皇室の伝統的な男系継承を確保する「養子案」の早期実現を求める活動を進めています

【報告書・全文】『安定的な皇位継承の在り方を検討する有識者会議』報告書(令和3年12月22日)

有識者会議(令和3年)
有識者会議(令和3年)

『安定的な皇位継承の在り方を検討する有識者会議』は通称であり、正式名称は『「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議』です。

議事録、資料などは次に示す内閣官房のホームページに掲載されていますが、Webでの閲覧や検索に適さないPDF形式であるため、当HPにてHTML形式に整形しなおしたものを掲載し、メディアによる切り取り・偏向報道を経ていない1次情報を広く国民の皆様に知っていただきたいと存じます。

「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議|内閣官房ホームページ
内閣官房,「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議

報告書PDF(令和3年12月22日決定)

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報告 令和3年12月22日 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案 に対する附帯決議」に関する有識者会議

目次

(略)

【1.はじめに】

 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」(平成 29 年6月1日衆議院議院運営委員会・同月7日参議院天皇の退位等に関する皇室典範特例法案特別委員会。以下「附帯決議」といいます。)では、「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」について、政府は検討を行い、その結果を国会に報告することとされています。

 この会議(以下単に「会議」といいます。)は、菅義偉内閣において、「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議』に関する有識者会議の開催について」(令和3年3月 16 日内閣総理大臣決裁)に基づき、上記の課題について、様々な専門的知見を有する人々の意見を踏まえ議論し整理することをその趣旨として設置されました。会議としては、この趣旨を踏まえた上で、若い世代や女性を含め幅広い方々から御意見を伺い、議論を進めました。

 7月 26 日の第 10 回会議においては、それまでの議論を基に「今後の整理の方向性について」を取りまとめ、また更なる議論のため、事務局に対し、制度的事項や歴史的事項について調査・研究を依頼しました。岸田文雄内閣において会議は再開され、調査・研究結果も踏まえながら 11 月以降議論を行い、今般、附帯決議をめぐる議論について会議として結論を得ることができました。

 天皇及び皇族に関する制度は、憲法に定められた国家の基本に関わる事柄です。附帯決議で示された課題については、国民の中でも様々な考え方があり、将来に向けた方策を見出していくには大変難しいものがありますが、今のうちに検討しておく必要があります。

 会議においては、3月以来 10 回を超える場を設け、慎重かつ真剣な議論を行ってきました。ここに、この課題についての会議としての考え方をお示ししたいと思います。

【2.現行の皇位継承・皇室制度の基本】

 憲法は、皇位は世襲のものであって、皇室典範の定めるところにより、これを継承する旨定めており、これを受け、皇室典範(昭和 22 年法律第3号)は、「皇統に属する男系の男子」である皇族が皇位を継承する旨を定めています。

 ここで、「男系」とは、父方のみをたどることによって天皇と血統がつながることとされています。一方、「女系」とは、「男系」以外の天皇との血のつながり、すなわち母方を通じてしか天皇とつながらない血のつながりを含んだ血統のつながりのことをいいます。

 今上陛下は第 126代の天皇でいらっしゃいますが、これまで歴代の皇位は、例外なく男系で継承されてきました。

 また、皇室典範には、

・非嫡出子は皇族としない
・皇族は、養子をすることができない
・皇族以外の者及びその子孫は、女子が皇后となる場合・皇族男子と婚姻する場合を除いて皇族となることがない
・皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる

ことなどが定められています。

 なお、「宮家」という言葉がありますが、これは、独立して一家をなす皇族に対する呼称であり、法律に基づく制度ではありません。

【3.議論の経緯】

 会議は、令和3年3月 23 日、菅義偉内閣総理大臣・加藤勝信内閣官房長官御出席の下、議論をスタートさせました。

 第1回会議においては、様々な専門的な知見を有する方々等から幅広く御意見を伺い参考とするため、10 の質問からなる聴取項目を作成し、ヒアリングを行うこととしました。この聴取項目は、

・「皇統に属する男系の男子」という皇位継承資格を有する皇族は、秋篠宮皇嗣殿下、悠仁親王殿下及び常陸宮正仁親王殿下の三方がいらっしゃるが、天皇陛下の次の世代の皇位継承資格者は、悠仁親王殿下のみである

・悠仁親王殿下以外の未婚の皇族は、全員が女性皇族であり、かつ、婚姻可能な年齢に達していることから、「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」とされている現行制度の下で、悠仁親王殿下の世代には、悠仁親王殿下の他には皇族がいらっしゃらなくなることもあり得る

という皇室の現状をどのように捉えるか、その現状に対してどのような対応策が考えられるのか、について考えていくため、作成したものです。(聴取項目の一覧は、参考資料6を御覧ください。)

有識者ヒアリングでの聴取項目(問1~問10) 第1回会議・資料8より
資料8 : 有識者ヒアリングの開催について(PDF/108KB) (以下、資料8の内容を文字起こししました) [資料8] 有識者ヒアリングの開催について 1.ヒアリングの開催趣旨 有識者会議において、附帯決議の一において示された課題について...

 この聴取項目に基づいて、4月8日の第2回会議から6月7日の第6回会議までの計5回、合計 21 名の方からヒアリングを実施いたしました。(ヒアリング対象者の一覧は、参考資料7を御覧ください。)

 ヒアリングの対象者を決めるに当たっては、幅広いお考えをお聞きすることができるよう、歴史や法律、皇室制度や宗教などに詳しい専門家の方々から御意見をお聞きすることはもちろん、若い世代の方々等を含め広くお考えをお聞きすることができるように留意しました。

 このヒアリングを通して様々な考え方をお聞きした後、4回にわたり行った議論を踏まえて、7月 26 日の第 10 回会議において「今後の整理の方向性について」を取りまとめました。また、その際、会議として更なる議論を行うために必要と考えられる事項について調査・研究を行うよう事務局に対して依頼し、事務局において、7月末から3か月余にわたり調査・研究が重ねられました。

 事務局における調査・研究が終了し、11 月 30 日、岸田文雄内閣総理大臣・松野博一内閣官房長官御出席の下、「今後の整理の方向性について」を基礎にして会議における議論を再開し、本日 12 月 22 日、第 13 回会議において、この報告を取りまとめるに至りました。

【4.皇位継承と皇族数の減少についての基本的な考え方】

 附帯決議で示された課題は、皇位継承の問題と皇族数の減少の問題の二つであります。

 皇位継承については、先に述べたとおり、現在、皇位継承資格者として、秋篠宮皇嗣殿下、悠仁親王殿下及び常陸宮正仁親王殿下の三方がおられます。会議では、ヒアリングを通じて、これまでの皇位継承の歴史や伝統の重みについて改めて認識を深めることができました。このような皇位継承の流れの中で、将来において、皇位が悠仁親王殿下に受け継がれていくことになります。

 ヒアリングの中では、皇位継承のルールについて悠仁親王殿下までは変えるべきでないとの意見がほとんどを占め、現時点において直ちに変更すべきとの意見は一つのみでありました。

 皇位の継承という国家の基本に関わる事柄については、制度的な安定性が極めて重要であります。また、今に至る皇位継承の歴史を振り返るとき、次世代の皇位継承者がいらっしゃる中でその仕組みに大きな変更を加えることには、十分慎重でなければなりません。現行制度の下で歩まれてきたそれぞれの皇族方のこれまでの人生も重く受け止めなければなりません。

 会議としては、今上陛下、秋篠宮皇嗣殿下、次世代の皇位継承資格者として悠仁親王殿下がいらっしゃることを前提に、この皇位継承の流れをゆるがせにしてはならないということで一致しました。

 悠仁親王殿下の次代以降の皇位の継承について具体的に議論するには現状は機が熟しておらず、かえって皇位継承を不安定化させるとも考えられます。

 以上を踏まえると、悠仁親王殿下の次代以降の皇位の継承については、将来において悠仁親王殿下の御年齢や御結婚等をめぐる状況を踏まえた上で議論を深めていくべきではないかと考えます。

 一方、現在、悠仁親王殿下以外の未婚の皇族が全員女性であることを踏まえると、悠仁親王殿下が皇位を継承されたときには、現行制度の下では、悠仁親王殿下の他には皇族がいらっしゃらなくなることが考えられます。会議においては、このような事態はどうしても避けなければならないということで意見の一致を見ました。そのためには、まずは、皇位継承の問題と切り離して、皇族数の確保を図ることが喫緊の課題であります。これについては、様々な方策を今のうちに考えておかなければなりません。

 以下、この「皇族数の確保」について、会議として議論したことをお示しします。

【5.皇族数の確保について】

(1)皇族の役割から見た皇族数の確保の基本的考え方

 皇族の役割には様々なものがあります。

 皇族の役割として制度的に定められているもののうち、最も多く活用されているのは、国事行為の臨時代行(国事行為の臨時代行に関する法律(昭和39 年法律第 83 号))です。国際親善のため天皇が外国を訪問することは数多く行われており、昭和天皇は2回、上皇陛下は御在位中 20 回にもわたり外国訪問を行われました。これらの天皇の不在時に憲法に定められた国事行為を行うのが臨時代行であり、この国事行為の臨時代行を担う皇族がいらっしゃらなければ、外国訪問を始め様々な天皇の活動に制約が生じるおそれがあります。

 皇室会議は、天皇及び男性皇族の婚姻、皇族の皇籍離脱などの皇族の身分に関わる重要事項を審議するため開催されるものですが、その議員計 10 名のうち、皇族が2名を占めることとなっています(*1)(皇室典範第 28 条)。さらに、皇室会議には予備議員という制度があり、議員に事故のあるときや議員が欠けたとき、また、自分の利害に特別の関係のある議事のため議員が参与できないときは、予備議員がその職務を行うこととなり、その数は2名と定められています(皇室典範第 30 条・第 36 条)。このように、皇室会議の制度は、複数の皇族がいらっしゃることを前提としているものです。

 また、摂政(皇室典範第 16 条等)は、天皇が成年に達しないときや天皇に心身の重患などがあり国事行為を自らすることができないときに置かれるものですが、そのような不測の事態に備え、摂政を務めるべき皇族の存在は欠くことのできないものです。

 このようなことからすると、悠仁親王殿下の世代に悠仁親王殿下以外どなたも皇族がいらっしゃらないという事態は、避けなければならないと考えます。

 以上のような法制度上の役割のほか、皇族の方々の役割としては、文化・学術、スポーツなどの各種式典や大会等へ臨席することや各種団体の活動に関わること、災害等に関わる慰問・慰霊、外国訪問など、国民の安寧な生活のため様々な公的活動を行うことや、天皇の身近な親族として天皇を支えるという役割などがあります。

 以上のような皇族方の役割も考慮すると、悠仁親王殿下の世代においても十分な数の皇族方に皇室にいらっしゃっていただく必要があると考えます。

 したがって、4.で述べたとおり、皇族数の確保を図ることは喫緊の課題であり、その際、多様な世代の方が男女共に、悠仁親王殿下を支えるということが重要なのではないかと考えます。

(*1)皇族以外の皇室会議のメンバーは、衆・参両院の正副議長、内閣総理大臣、宮内庁長官、最高裁判所の長官・裁判官の8名である。
(2)皇族数確保の具体的方策

 では、皇族数を確保する具体的な方策としてどのようなものがあるのでしょうか。ヒアリングにおいて様々な考え方をお聞きし、議論を重ねていく中で、会議としては、以下の三つがその方策としてあるのではないかと考えるに至りました。

① 内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとすること
② 皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とすること
③ 皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とすること
① 内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとすること

 悠仁親王殿下の世代に、悠仁親王殿下以外の皇族がいらっしゃらなくなるおそれがあるのは、現行制度が女性皇族は婚姻により皇族の身分を離れることとなっていることに、一つの原因があるものと考えられます。

 そこで、この制度を改めて、内親王・女王は婚姻後も皇族の身分を保持することとし、婚姻後も皇族として様々な活動を行っていただくというのがこの考え方です。

 これは、明治時代に旧皇室典範が定められるまでは、女性皇族は皇族でない者と婚姻しても身分は皇族のままであったという皇室の歴史とも整合的なものと考えられます。和宮として歴史上も有名な親子(ちかこ)内親王(第 120 代仁孝天皇の皇女)は、徳川第 14 代将軍家茂との婚姻後も皇族のままでありましたし、家茂が皇族となることもありませんでした。 また、女性皇族に婚姻後も皇族の身分を保持していただくことは、女性皇族が現在行っておられる様々な公的活動が継続的に行われていくことにつながり、担われる御公務の発展が期待されるとともに、関わっておられる行
事や団体などの継続的発展の観点からも望ましいのではないでしょうか。

 ただし、この方策に反対する考え方もあります。その代表的なものは、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持することが皇位継承資格を女系に拡大することにつながるのではないか、というものです。これは、女性皇族の婚姻後生まれてくる子(女性皇族の配偶者が皇統に属する男系の男子でない限り、父方で天皇と血統がつながらないので女系の子となる。)にもしも将来皇位継承を認めることとなれば、それは女系継承になってしまうという考えです。

 この点については、女性皇族が皇族でない男性と婚姻しても皇族の身分を保持するという新しい制度を導入した場合、その子は皇位継承資格を持たないとすることが考えられます。また、配偶者と子は皇族という特別の身分を有せず、一般国民としての権利・義務を保持し続けるものとすることが考えられます。

 以上のような新しい制度とする場合でも、現在の内親王・女王殿下方は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときには皇族の身分を離れる制度(皇室典範第 12 条)の下で人生を過ごされてきたことに十分留意する必要があります。

②皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とすること

 養子は、皇族については、皇室典範第9条により認められていませんが、一般の国民には、民法(明治 29 年法律第 89 号)に基づき広く活用されている制度です。

 実際の養子の目的は様々であり、十分な監護が得られるよう未成年の子のために行われる養子縁組もありますが、例えば家名・家業を継がせる(*2)という目的で、養子となるのにふさわしい人を、当事者間の合意により養子とすることも行われています。

 皇族数が減少する中で、皇族が養子を迎えることを可能とし、養子となった方が皇族となり、皇族の役割、皇室の活動を担っていただく、ということは採り得る方策であるものと考えます。その場合、皇族が男系による継承を積み重ねてきたことを踏まえると、養子となり皇族となる者も、皇統に属する男系の男子に該当する者に限ることが適切であると考えます。

 現行の制度では、婚姻により女性が皇族となること及び皇族の夫婦から子が生まれること以外に皇族数が増加することはありません。未婚の男性皇族が悠仁親王殿下以外いらっしゃらない現状において、皇族が養子を迎えることを可能とすることは、少子化など婚姻や出生を取り巻く環境が厳しくなる中で、皇室を存続させていくため、直系の子、特に男子を得なければならないというプレッシャーを緩和することにもつながるのではないかと考えます。

 この方策については、昭和 22 年 10 月に皇籍を離脱したいわゆる旧 11 宮家の皇族男子の子孫である男系の男子の方々に養子に入っていただくことも考えられます。これらの皇籍を離脱した旧 11 宮家の皇族男子は、日本国憲法及び現行の皇室典範の下で、皇位継承資格を有していた方々(*3)であり、その子孫の方々に養子として皇族となっていただくことも考えられるのではないでしょうか。皇籍を離脱して以来、長年一般国民として過ごしてきた方々であり、また、現在の皇室との男系の血縁が遠いことから、国民の理解と支持を得るのは難しいという意見もあります。しかしながら、養子となった後、現在の皇室の方々と共に様々な活動を担い、役割を果たしていかれることによって、皇族となられたことについての国民の理解と共感が徐々に形成されていくことも期待されます。

 また、皇位継承に関しては、養子となって皇族となられた方は皇位継承資格を持たないこととすることが考えられます。

 なお、養子となられる方が婚姻していて既に子がいらっしゃる場合においては、民法同様、子については養親との親族関係が生じないこととし、皇族とならないことも考えられます。

(*2)例えば、徳川家は、征夷大将軍全 15 代のうち6代が先代の実子ではなく、徳川家康の血をひく子孫が後を継いでいる。家康の血をひいていることが重視されたものと考えられ、例えば、第 10代家治は、5親等離れた家斉を養子として後を継がせている。
(*3)日本国憲法及び現行皇室典範が施行された昭和 22 年5月3日から同年 10 月 14 日に皇籍離脱するまでの間は、皇位継承順位第6位の寬仁親王(三笠宮崇仁親王第1男子)に次ぐ第7位以降、26 方が皇位継承資格を持っていた。
③皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とすること

 この方策は、皇族という我が国において特別な立場について、養子のような一般国民に広く受け入れられている家族制度とは異なるアプローチで、新たなメンバーを迎えようとするものであるといえます。

 ①・②の方策と異なり、現皇族の御意思は必要としない制度であるという面もあります。他方、皇統に属するとはいえ現在一般国民である方が、現在皇室にいらっしゃる皇族方と何ら家族関係を有しないまま皇族となることは、国民の理解と支持の観点からは、②の方策に比べ、より困難な面があるのではないかとの指摘もあるところです。

 以上の①から③についての考察を踏まえると、皇位継承資格の問題とは切り離して、喫緊の課題と考えられる皇族数の確保を図る観点から、

① 内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとすること
② 皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とすること

という二つの方策について今後、具体的な制度の検討を進めていくべきではないかと考えます。

③ 皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とすることについては、①及び②の方策では十分な皇族数を確保することができない場合に検討する事柄と考えるべきではないでしょうか。

 いずれにせよ一定の皇族数を確保することは必須の課題であるので、そのためには多様な方策が存在することが重要であるとの観点に立って検討を進めていくべきではないかと考えます。

(3)その他

 以上の方策のほかに、現在の制度における皇族の範囲の変更は行わないで、婚姻により皇族の身分を離れた元女性皇族に、その御了解をいただいた上で、様々な皇室の活動を支援していただくということも考えられます。現に、皇族の身分を離れた後も皇室にゆかりの深い役割を続けられている元女性皇族の方もいらっしゃいます。しかしながら、摂政や国事行為の臨時代行や皇室会議の議員という法制度上の役割は「元皇族」では果たすことはできません。現在の皇室の活動等の担い手を確保していくための一つの方策ではありますが、やはり皇族数の確保のためには、上記①から③のような方策が必要とされるものと考えられます。

【6.おわりに】

 我が国の皇室は、世界に例を見ない長い歴史と伝統を有しています。この会議のメンバーはそれぞれ、皇室に関わる議論に参加することについて、役割をしっかり果たさなければならないという思いと同時に我が国の未来に関わる大変重く難しい問題であるという認識を強く持っております。

 しかしながら、これらの課題は時機を失することなく考えていかなければならない事柄でもあります。会議のメンバーは、歴史や伝統に対する謙虚な気持ちを抱き続けながら、真摯に、慎重に議論に臨んでまいりました。

 ヒアリングでは、議論を進めるために大変有意義な知見を数多く得ることができましたし、専門分野、世代、性別など様々な面で多様な方々から幅広い考え方を伺うことができました。特に、この議論を行うに当たっては、歴史や制度に対する正確な知識が必要不可欠であるということを改めて認識しました。

 会議のメンバーも様々なバックグラウンドを持ち、男女同数で年代的にも幅広い構成の中で、それぞれ真摯に議論を重ねてまいりました。具体的には、憲法を始め現行の法制度と整合を取りながらどのように制度設計すべきか、御公務の在り方を含め、今後の皇室の活動をどのように考えていくべきか、制度を決めるだけでなく、国民や当事者の方にも受け入れられるようにするにはどうすればよいか、当事者の方の御意思をどのように制度に位置付けることができるか、などについて真剣に考えたところです。

 その中で、皇位継承については悠仁親王殿下までの流れを前提にすべきであるとの考えで会議として一致しました。皇位継承の問題とは切り離した上で皇族数の減少が喫緊の課題であるという共通認識の下に、皇族数の確保に向けてできるだけ多様な選択肢を提示するという考え方に立って検討を進め、その具体的な方策を示唆するに至った次第です。

 これらの方策を実現することは、悠仁親王殿下の後の皇位継承について考える際も、極めて大事なことであると考えます。

 これらの方策について、国民の間には、様々な受け止めもあるかと思います。ここにお示しした会議の議論の結果が、国会を始め各方面における検討に資するものとなることを期待するものです。

 その際、福沢諭吉が「帝室論」の中で、「帝室は政治社外のものなり」と述べているように、この皇室をめぐる課題が、政争の対象になったり、国論を二分したりするようなことはあってはならないものと考えます。静ひつな環境の中で落ち着いた検討を行っていただきたいと願っています。

 

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