『安定的な皇位継承の在り方を検討する有識者会議』は通称であり、正式名称は『「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議』です。
議事録、資料などは次に示す内閣官房のホームページに掲載されていますが、Webでの閲覧や検索に適さないPDF形式であるため、当HPにてHTML形式に整形しなおしたものを掲載し、メディアによる切り取り・偏向報道を経ていない1次情報を広く国民の皆様に知っていただきたいと存じます。
議事次第
第6回 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議 議事次第
日時:令和3年6月7日(月)17:00~19:15
場所:総理大臣官邸大会議室
議事
○ 開会
○ 有識者ヒアリング
・綿矢 りさ 小説家
・半井 小絵 気象予報士・女優
・里中 満智子 マンガ家
・松本 久史 國學院大學教授
○ 閉会
配付資料
資料1 : 有識者ヒアリングの開催について(PDF/124KB)
資料2 : 綿矢 りさ 小説家 説明資料(PDF/261KB)
資料3 : 半井 小絵 気象予報士・女優 説明資料(PDF/265KB)
資料4 : 里中 満智子 マンガ家 説明資料(PDF/235KB)
資料5 : 松本 久史 國學院大學教授 説明資料(PDF/622KB)
議事録
「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議(第6回)議事の記録
1 日時:
令和3年6月7日 16:56~19:04
2 場所:
総理大臣官邸大会議室
3 出席者:
・「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者 会議メンバー
大橋 真由美 上智大学法学部教授
清家 篤 日本私立学校振興・共済事業団理事長 慶應義塾学事顧問
冨田 哲郎 東日本旅客鉄道株式会社取締役会長
中江 有里 女優・作家・歌手
細谷 雄一 慶應義塾大学法学部教授
宮崎 緑 千葉商科大学国際教養学部教授
・政府側出席者
杉田 和博 内閣官房副長官
岩尾 信行 内閣法制次長
山﨑 重孝 内閣府事務次官(皇室典範改正準備室参与)
池田 憲治 宮内庁次長
大西 証史 内閣総務官(皇室典範改正準備室長)
溝口 洋 内閣審議官(皇室典範改正準備室副室長)
4 会議の内容
(1) 開会
座長から、本日の会議について、以下のような説明があった。
・ 本日は、第5回目の有識者ヒアリングを行う。
・ 小説家の綿矢りさ氏、気象予報士・女優の半井小絵氏、マンガ家の里中満智子氏、國學院大學教授の松本久史氏の4名の方から順に御意見を伺う。
・ 各ヒアリング対象の方から20分程度御意見を伺い、10分程度意見交換を行う。
・ 意見交換では、第1回会議において決定した10の聴取項目にない事項も自由に質問していただいて結構である。
(2) 綿矢りさ氏(小説家)からの意見陳述及び意見交換
資料2 : 綿矢 りさ 小説家 説明資料(PDF/261KB)
ア 意見陳述
座長からの紹介の後、次のように綿矢氏から意見陳述があった。
問1の「天皇の役割や活動についてどのように考えるか」という質問についての、私の回答を申し上げる。
天皇陛下は、余りにも幅広い役割を担っておられる。その中で、祭祀、そして国事行為が重要な役割・活動であると思うが、これらは、国民として知ろうと思わなければ、必ずしも日常の中で直接的に実感する機会は少ないのではないかとも思う。
一方で、春・秋の園遊会等での華やかな場での両陛下の交流のお姿を見るにつけ、また、地方に訪問された際、その地に来られたときだけでなく、来られたずっと後も、その地域の人々が誇りに思い、励まされ、心の支えにしていることを、旅行先で天皇・皇后両陛下の写真などを見ることを通じ、実感した。私自身も、京都で一度、偶然に美智子皇后陛下が乗っておられたお車が歩いていた道の近くを通り、お手振りのお姿に接することができたことがある。一瞬ではあったが、心に残る貴重な体験だった。私の従姉妹が看護師となった際にも、美智子皇后陛下から式典で賞状を頂戴し、今に至るまでそのことを励みにしていると言っていたことを思い出す。
さらに、地震等の天災の度に被災地を訪問され、被災された方々と同じ目線で言葉を交わされる姿を見て、どれだけ尊い身分であられても、慈悲の心で大変な状況にある人々に接することの大切さを学んだ。地震が頻繁に起こる国に住む不安な気持ちを支えてくださっていると思う。被災された方々だけでなく、地震の多い国で暮らす他の国民も、そのお姿に随分勇気付けられたのではないか。
あわせて、日本中あるいは海外でこれまでにどのようなことがあったか、歴史が大きく動いた出来事に向き合うことができる。天皇・皇后両陛下が、沖縄、グアム、サイパン、フィリピン、パラオ等の激戦地に赴き慰霊訪問をされたことを通じて、日本のこれまでたどってきた歴史を学び、考え直した。青空と海に囲まれた美しい景色の中に、当時どれだけの悲劇があったかに、慰霊されるお姿を通して思いを馳せた。
このように、天皇・皇后両陛下の役割・活動は、大変頼りになるものであり、国民として純粋にうれしく、励みにも勇気にもなるものである。自分自身だけでなく、自分以外に大変な目に遭った方々を労わる大切さも学ぶこともできる。災害や慰霊の場所を天皇・皇后両陛下が訪れるニュースは、ただただ感動する。
一方で、御高齢や、心身の不調がある際まで、遠くまで、長い時間をかけて行かれるのを見ていると、御負担を心配せざるを得ないときもある。大きな被害に苦しみ、悲しむ人々を励ますのは、精神的にかなりの重労働ではないだろうか。相手の気持ちが跳ね返ってきて、心を痛められたことも多々あったと思う。特に、御退位前の上皇・上皇后両陛下におかれては、御高齢になるにつれ、御移動の負担や過密なスケジュールの疲労などを心配する気持ちが強くなった。
今上天皇・皇后両陛下におかれても、例えば直近において、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、医療従事者の負担増や、多くの国民が不安を感じていることに、心を痛められていたと思う。人と人との接触が難しくなったことで、今までされてこられたような御訪問も難しく、心を砕かれたのではないかと思う。リモートで医療従事者を激励された話を聞いた際は、手段が限られている中でも精一杯国民に寄り添おうとされる姿に感動したし、多くの国民も同様の感情ではないかと思う。
問2「皇族の役割や活動についてどのように考えるか」という質問についての私の考えを申し上げる。
皇族の方々が、各種式典や国際的・全国的な種々の大会・行事等に御臨席されることは、その大会・行事に参加する方々にとり、大変な励みになると思う。また、皇族の方々が諸外国を御訪問され、各国の王室の方々とお会いになった際は、それが広く人々の目に届き、私自身もその姿を見て、諸外国の王室を知る機会に接することができた。訪問先の国々で、皇族の方々が大いに歓待されている御様子は、一国民として励みになるものであった。訪問先の国の方々にとっても、自国の王室と日本の皇室の長い歴史を知る良い機会になるのではないかと思う。ほかにも、例えば新年一般参賀において、今上天皇・皇后両陛下と共に、成年皇族の皆様がお集まりになるのは大変華やかであり、そのお姿を見るために、文字どおり道を埋め尽くすほどの多くの人々が毎年集まり、勇気付けられていることを見るにつけ、皇族の方々が多くの人々から愛されていると感じる。
問3「皇族数の減少についてどのように考えるか」という質問についてお答えする。
皇族数の減少には様々な原因があると思うが、長期間のスパンで、状況に合わせて対応する必要があると思う。ただ、皇族数の減少が進み過ぎてからだと、手遅れになる可能性もある。皇室の存続が危ぶまれるような事態になることは、避けたほうが良いのではないか。
出生については、少子化の問題は皇室に限った話ではなく、今の日本社会でもなかなか解決できない、非常に難しい問題でもある。長い皇室の歴史の中では、これまでにも何度か、皇族の数の減少という問題が起きたこともあったと承知しているが、その都度策が講じられてきた。今でもなお、こうして皇族の方々が御活躍されている背景には、その時々の状況や、時代背景に応じた対応があったからと思われる。
問4「皇統に属する男系の男子である皇族のみが皇位継承資格を有し、女性皇族は婚姻に伴い皇族の身分を離れることとしている現行制度の意義をどのように考えるか」という質問について、考えを申し上げる。
今後、いつ、どのように制度の変更があるとしても、御本人が「ずっとこうだ」と言われてきた制度から、いきなりの変化が生じることは、動揺があるのではないかと思う。人生設計は個人の内面で、長い時間をかけてされていくものだと思う。関係する制度が、婚姻後の家庭環境にも関わってくる可能性がある。ただ一般的には、婚姻前の生活と、婚姻後の生活は大きく変わるものだと思う。家族を作ることだけでなく、自分のアイデンティティも婚姻によって変わる部分は大きい。それは性別によって変わらないのに、性差によって違いがあり過ぎた場合、違和感がある人も多いのではないか。
問5「内親王・女王に皇位継承資格を認めることについてはどのように考えるか。その場合、皇位継承順位についてはどのように考えるか」という質問に対して回答する。
中学生の頃、百人一首のカルタをしているとき、女性天皇である持統天皇の札を見て、女性の天皇もいらっしゃったのかと思ったことが今も強く印象に残っている。また、詠まれる和歌を通じて、女性天皇がどのようなことを考えられ、どのような日本の四季に触れられていたかも知ることができた。
国民の考えも時代により変わっていく中で、象徴としての天皇の存在を考えたときに、女性天皇の誕生を歓迎する風潮もあるかと思う。皇位継承順位に関しては、今既に決まっている継承順位を軽く扱っていいのかという意見もあると思われ、今すぐ決められる問題でもないかもしれない。
問6「皇位継承資格を女系に拡大することについてはどのように考えるか。その場合、皇位継承順位についてはどのように考えるか」という質問にお答えする。
永らく受け継がれてきた皇室の歴史、そして築き上げられてきた伝統へ敬意を払うことは大変重要だと思う。女系天皇に関しては、今の時代にかけて、一部容認してもよいのではないかとの意見も出ているが、伝統を重んじる観点から、慎重に取り扱う必要があると考えられる。
問7「内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することについてはどのように考えるか。その場合、配偶者や生まれてくる子を皇族とすることについてはどのように考えるか」という質問についてお答えする。
慎重な検討が必要ではあるが、皇族の減少の問題を考慮に入れると、あり得る方向性ではないかと思う。ただし、そのような場合であっても、内親王殿下も女王殿下も、現在の制度を踏まえての御自身の人生設計がおありかと思われ、すぐに制度を改めて適用するのは難しいのではないかと思う。配偶者や生まれてくる子を皇族とすることについては、特に慎重な扱いが必要かと思う。新たに制度を作るなどして対処する必要があると思う。
問8「婚姻により皇族の身分を離れた元女性皇族が皇室の活動を支援することについてはどのように考えるか」という質問について、私の考えを申し上げる。
問1、問2にも関連するが、皇族の方々は国民に愛され、国民を励まし勇気付ける存在である。他方で、皇族数は減少し、皇族の方々の御負担は増しているのではないかと思う。このような事情を考慮したときに、元皇族女性により支援の手が増えることは、皇族の方々の負担軽減に貢献すると思う。
問9「皇統に属する男系の男子を下記①又は②により皇族とすることについてはどのように考えるか。その場合、皇位継承順位についてはどのように考えるか。①現行の皇室典範により皇族には認められていない養子縁組を可能とすること。②皇統に属する男系の男子を現在の皇族と別に新たに皇族とすること」という質問についてお答えする。
これまでの長い皇室の歴史においても、皇位継承の危機において、知恵を出し合い、皇統を遡り、伝統ある皇位継承を維持してきた経緯があり、皇族数が減少する現状において、現実的な案ではないかと思う。厳密なルールは必要だと思うが、安定的な皇位継承確保の観点からも、皇室の歴史に整合的な形での養子縁組は可能ではないかと思う。
現在又は将来の皇族の方々の、出生に関する様々なプレッシャーもあるのではないかと考える。候補となる方の御意向もあるが、皇族数が減少している今、長い皇室の歴史を重んじつつ、元皇族の系譜の方々をしかるべき形で皇族として改めて迎え入れ、皇室を支えていただくことは、これまでの伝統に整合的ではないかと思う。皇族数の減少と現在の皇族の方々の御負担増という差し迫った課題を踏まえて検討を進めるのが良いと思う。
問10「安定的な皇位継承を確保するための方策や、皇族数の減少に係る対応方策として、そのほかにどのようなものが考えられるか」という質問への答えを申し上げる。
長い伝統と歴史を持ち、国民に愛され、国民を励まし勇気付ける存在である皇室が、これからも長く続いていくためにも、皇族の方々の心身の負担が低減されることも重要だと考える。プライバシーが保たれ、セキュリティが確保された上で、良い出会いが多く広がっているような環境でお過ごしいただくことが重要ではないかと考える。
以上である。
イ 意見交換
有識者会議メンバーと綿矢氏との間で、次のような質疑応答があった。
・ 皇室との関係を自然体で描かれている印象を文面から受けた。京都でお過ごしになり、日本の伝統や文化、あるいは皇室というものに、比較的長く自然な形で親しまれてこられたことが関係しているのかと感じた。日本の伝統を重んじる考え方と、男女平等のような現代的な合理的思考のバランスをどう取るのかという点について、お感じになっていることをお聞かせいただきたい。
・ 私は京都出身で、通っていた高校も百人一首に出てくるようなところが近く、授業中の窓の外に、船岡山という山があり、それが古文に出てきたとき、先生が「あの山ですよ」と言ってくださったり、確かに昔の伝統を感じられるような環境で育ってきたかなと思う。そういった古いものに囲まれて、お寺や神社なども、本当によく行くことも多かった。今の話を聞いていて思うのは、伝統と、男女平等とか現代的なバランスが、そんなにそれほど喧嘩しているかなというイメージはある。例えばその伝統に関して、今ちょっとずつ変わってきていることが、それが必ずしも伝統に反しているとは限らないし、また、今までの伝統というものを大事にしながらも、現代の考え方とバランスをとって、何とか共存というか、一緒にやることもできるんじゃないかなと思う。女性天皇に関しても、昔よりは今のほうが受け入れられやすくなっているだろうし、個人的にも、今後もっとその可能性が増えていけばよいなと思っている。質問に答えさせていただく中で、長い話し合いや意見の交換などは必要だとは思うが、それほど伝統と現代的な考え方のバランスが離れているというような感じは受けなかった。
・ 婚姻によって家庭環境が変わる、それが御本人のアイデンティティにも関わってくる、というお話があった。個人の人生の一出来事として触れられた点に、はっとさせられた。女性皇族は結婚に伴って皇族の身分を離れる、ということについて、皇族方は、ある程度の年齢で御自身も理解され、今もそのような認識の中で生きてこられている。仮に、皇族数の減少を止めるために女性皇族に皇室に残ってほしい、となった場合に、それはいつのタイミングで行うのが良いとお考えになるか。
・ なぜそういうふうに考えたかというと、私も結婚や出産を経ていく中で、それまでの、仕事だけしていればいいというような生き方とは全く変わって、分かっていたことだったけれど対応するのに大変だった、という経験があった。そういうことを踏まえて考えると、いきなり制度が変わったということで、自分の何となく予想していたライフプランというものが突然変わるというのは、対応するのが気持ちの面でも大変なのではないかな、ということを思って書いた。具体的にどのあたりの時点でそういう制度が変わったというようなことを御説明するかというのを考えたときに、自分だったら中学に上がる前ぐらいに教えてもらった方が良いのではないかと思う。大体それぐらいの年齢から、自分の将来どういうふうになるんだろう、自分は結婚するんだろうか、だとすると相手はどんな人なんだろうか、というふうに興味を持つ年頃かなと思う。そのぐらいの時期に伝えてもらえたら、心の準備もしやすいのではないかなというふうに思う。
以上の意見陳述及び意見交換の後、座長から謝意を述べ、綿矢氏からのヒアリングを終了した。
(3) 半井小絵氏(気象予報士・女優)からの意見陳述及び意見交換
資料3 : 半井 小絵 気象予報士・女優 説明資料(PDF/265KB)
ア 意見陳述
座長からの紹介の後、次のように半井氏から意見陳述があった。
私は気象予報士で女優をしている。一国民である私が皇室のことを話すというのは、とても恐れ多いことである。しかし、日本そのものの存続に関係する重要なことであるということから、勇気を振り絞り、この場で発言させていただいている。私は子供の頃から、和気清麻呂の子孫だということを両親や祖父母から聞いていたが、実は昔は全く興味がなかったので、麻呂という言葉だけを覚えており、柿本人麻呂の子孫だと思っていた。数年前にニュースのコメンテーターのお仕事を頂くようになり、歴史を勉強し、見直していく中で、和気清麻呂についてどのような人物であったのかということを知るようになった。
和気清麻呂について少し御説明させていただくと、和気清麻呂は皇居の周りに2体ある銅像の1つになっており、皇統をお守りしたという、いわゆる道鏡事件に関係する人物だと言われている。戦前は教科書に載り、10 円札の肖像画にもなった。また、清麻呂の姉、和気広虫は、宮中で天皇にお仕えした女官として働いていた。災害や戦乱で親を亡くした子供たちを育てるために、日本で初めて孤児院を開いたと言われている人物でもある。
自分の先祖がお仕えした皇室について知るために、皇居の勤労奉仕にも参加させていただいた。そのときに天皇陛下、つまり現在の上皇陛下、そして上皇后陛下、その当時の皇太子殿下、現在の今上陛下に御会釈を賜り、そのときの光景がとても心に残っている。
私が参加した奉仕団は、平均年齢が30代くらいの若い奉仕団だった。国民の幸せと世界の平和を祈ってくださっている天皇陛下のいらっしゃる、この国に生まれた幸せというのを実感し、失礼なことかもしれないが、お父上、お母上と思ってしまうような親しみも湧いてきた。奉仕団のメンバーは、みんな同じような気持ちでいたと思う。
ここからヒアリング項目に沿ってお話しさせていただく。
問1の天皇の役割や活動について、天皇陛下は常に我が国と国民の安寧を祈ってくださる有り難い存在である。そして、天皇陛下は日本の長い歴史の中で育んできた伝統・文化を全て背負ってくださっている存在である。つまり、歴代の天皇陛下は「日本そのもの」であり、現代に生きる我々とその先祖の生きてきた証であると考えている。
問2の皇族の役割は、天皇陛下をお支えいただき、日本の伝統・文化を守ってくださりながら、海外に対しては日本を代表する大使のような御存在でいらっしゃる。その中で最も大切な事項は、皇統を引き継いでいかれることにある。なぜなら、126 代続いた皇統が途絶えるということは、日本そのものが終わるということだからである。
次に、問3である。皇族数の減少については、日本の存続の危機であると考えている。
そして、問4については、今上陛下は126代目で、これまでのどの天皇も父方をたどると神武天皇につながるということに大きな意味がある。女性皇族が婚姻に伴い皇族の身分を離れる現行制度は、女性皇族と婚姻関係にある民間の男性との皇位継承争いを引き起こさないためにも、意義あるものであると思っている。
問5の内親王・女王の皇位継承については、内親王・女王が天皇陛下として皇位につかれることは前例がある。ただし、前例に従い、一代限りとして、皇位継承は候補となる男系男子がいらっしゃる場合は、男系男子を優先するということを支持する。
問6の皇位継承資格を女系に拡大することについては、問4、問5の考え方と同じであり、女系天皇への拡大は我が国の歴史上ないことである。日本を混乱させる原因となり、許容できないと考える。
問7の内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持されることについては、避けるべきだと思うし、配偶者を皇族とすることはあってはならないと思う。皇位継承は従来の伝統を崩してはならないと思っている。こうしたことから、今後の変更で女性皇族も皇位継承資格を持つようになられたとしても、内親王・女王が結婚された場合は、従来どおり皇籍を離脱するべきであると考える。
問8の婚姻により皇族の身分を離れた元女性皇族が皇室の活動を支援することについては、大使的な役割として、皇室の公務を担っていただくことには賛成である。
問9の皇統に属する男系の男子を①又は②により皇族とすることについて、①現行の皇室典範により皇族には認められていない養子縁組を可能とすること、②皇統に属する男系の男子を現在の皇族と別に新たに皇族とすることは、①・②共に賛成である。皇統を守るための方法は1つに絞らず、皇統を引き継いでくださる方が多いほど、安定的な皇位継承につながる。その際には、これまでの皇室典範の皇位継承順位に準ずることが良いのではないかと考える。
問 10 の安定的な皇位継承を確保するためには、もし御結婚により皇籍離脱された元女性皇族が、民間人として皇室の活動を支援され、御公務を一部担われるというのであれば、過去に皇籍離脱された宮家の男系男子も元皇族の民間人であるから、同様に皇室の活動を支援したり、御公務の一部を担っていただいたりするべきと考える。
民間人として生まれた元皇族が皇籍に復帰し、天皇となられた醍醐天皇の例もある。旧宮家の男系男子の皇統復帰は、皇統の安定継承のためにも今すぐにでも実現する動きに入らなければならないと思う。
悠仁親王殿下に男子のお子様がお生まれになれば皇統をつなぐことができ、旧宮家の男系男子の皇籍復帰は必要ないという意見もあるが、私はそうは思っていない。それは、悠仁親王殿下の代になれば、皇位継承権を持つ皇族男子が悠仁親王殿下お一人になられるからである。悠仁親王殿下にとっては、男子のお子様を授からなければならないというプレッシャーが、過度なプレッシャーとなるし、もし男子がお生まれにならなければ、皇統の継承の危機となる。また、同世代に御相談できる男性皇族がいらっしゃるというのは、極めて重要なことだと考える。
歴代の天皇陛下も様々なことにお悩みになったということが記録に残っている。昭和天皇におかれては、弟宮のうち特に高松宮殿下に折々に御相談されたし、上皇陛下には常陸宮親王殿下、天皇陛下には秋篠宮皇嗣殿下が弟宮としていらっしゃる。
皇族方のお心について、何かを述べることはせんえつだと思うが、いざというときに皇位継承権を持つ男系男子の皇族がおられるということは、悠仁親王殿下にとっても心強いことではないだろうか。だから、旧宮家の男系男子の皇籍復帰は、今すぐ取り組まなければいけないことであると思っている。
そのためには、皇室について国民が深く知り、理解することが必要である。学校教育でも、日本は天皇陛下がいらっしゃる長い歴史のある国であるということを表面的にしか教えない。日本は天皇陛下の「しらす」国である。「しらす」とは日本書記の解説書によると、武力や権力で国を治めるのではなく、国を「家」、国民を「家族」として幸せな国を作ることである。
天皇陛下は、国民の幸せを祈ってくださっている。このように幸せな国に生きていることを実感し、先祖に生かされて今の自分があるということを考えると、感謝の気持ちが湧き、日本を誇りに思い、大切にすることだろう。日本に誇りを持ち、大切にするということは、先祖や家族も大切にし、自分自身も大切にすることにつながると思う。皇室の存在は、我々自身の歴史でもある。
最後に、私は今のこの時代に 2,000年以上大切にしてきた先人からの習わしを崩していいものかと思っている。男系男子の伝統を崩すことは、126代続いた皇室とは違う王朝になることである。つまり、日本では無くなるということである。できる限りの方法で日本を守っていくということを私は希望している。
短いが、ここまで話を聞いていただき感謝申し上げる。
イ 意見交換
有識者会議メンバーと半井氏との間で、次のような質疑応答があった。
・ 男系男子で皇位をつないでいこうとするときに、旧皇族の子孫の方を皇族とすることが考えられるとのお話であった。皇族の方々に対する国民の感情は、血統、血のつながりによるものもあるが、皇族として生まれ育ち、人格を磨き、練り上げていかれるということによって、親愛の情、尊崇の念を抱くという面もあるのではないか。旧皇族の子孫の方を皇族とする際に、そのことをどのようにお考えになるか。時間を必要とするという考えもあるかと思うが、いかがか。
・ 確かに、今民間人として、自由な生活をされている旧皇族の方々が、急に皇室に入られるというのは、大変なことだと思う。私ではお気持ちは計り知れない。おっしゃるとおり、すぐに旧皇族の 11 宮家の皇籍復帰という形でなくても、例えば、養子というのが、一つ。あとは、女性皇族が旧皇族の男系男子と御結婚されるという形もあるとは思う。それについては、御本人、皇族の方々お一人お一人のお心の問題なので、私がこんなことは申し上げられないが、どういうことで皇統を守っていけるとかということを考えたときには、養子若しくは女性皇族と旧皇族の男系男子が御結婚される、ということも考えの中に入れておけたらなと、そういう気持ちでいる。
・様々な調査などで、女性天皇と女系天皇の違いが理解されていないのではないか、関心を持たれていないのではないか、などということも言われているようであるが、同世代の周りの方とお話されるときに、今日おっしゃっていただいたような感覚を持っている方はいらっしゃるか。
・ 私自身も、5年くらい前までは、女性・女系の違いも分からずにいた。全く分からずにテレビ番組に出て、突っ込まれたこともあった。深く知るにつれて、ああ、これは現代の感覚では考えてはいけないんだ、ということが分かった。男系男子の方に限定されていることが女性差別だ、というふうなことは、私が知らなかったから、そう思っていた。実際に今までの歴史と皇室の大切さ、先祖がどれだけ困難にも負けずに皇統をつないできたか、ということに思いを馳せると、そういうことが言えなくなった。女性天皇・女系天皇を認めないことが差別だということは言えないと思った。例えば、民間の女性は皇族になれるが、男性はなれない。逆に言えばそれは、女性差別と一概に言えないということじゃないか。男女で逆のところもある。そこを知ってしまったというのがある。
御質問の、今私の周りで知っているかといえば、ずいぶん Twitter など SNS が発達してきて、また、YouTube でのニュース番組などが増えて、一つの考え方ではなく、いろいろな発言が広く伝わるようになったので、昔より私のような考え方の人は増えていると思う。皇居勤労奉仕でも、主に30代前後の方々と一緒にいたが、みんな、天皇皇后両陛下がお車寄せにこられたときから感動して、どれだけ不自由な生活を送られながら定めとして国を背負ってくださっているのか、ということを頭に浮かべると、自然と涙が出てくるということであった。だから、知っているのと知らないのとは全然違って、知った上で、天皇陛下のことを考えると、天皇陛下が自分たちの祖先、そして今を生きる自分自身の国を背負ってくださっている。つまり、天皇陛下の御存在は、自分たち自身でもあるという感覚になってきた。
・ 「しらす」国という概念を述べていただいた。対立概念は「うしはく」で、自分のものにする、所有するということだそうである。個人主義的な考え方、自己主張を美徳として教育されてきた戦後の民主主義教育の価値観の中だと、違和感を覚えることもあるのではないかとも思われるが、それは教育の中で知らせていけば、うまくいくというふうにお考えか。
・ 今の教育のままだと、そういう日本のことを考えるという時間は少ないと思うけれども、これから変わればいいなと希望している。私自身も気付いたのが数年前で、両方の気持ちが分かる。女性差別だと思っていた時もあったので、その気持ちはよく分かるが、今やはり、勉強していくと述べさせていただいたような考えになった。
以上の意見陳述及び意見交換の後、座長から謝意を述べ、半井氏からのヒアリングを終了し、約10分間の休憩となった。
(4) 里中満智子氏(マンガ家)からの意見陳述及び意見交換
資料4 : 里中 満智子 マンガ家 説明資料(PDF/235KB)
ア 意見陳述
座長からの紹介の後、次のように里中氏から意見陳述があった。
私は漫画家で、一応仕事の上で歴史物等を書いているが、所詮は素人である。歴史のことも結局感性で受け止めて仕事をしてきたので、ちょっと的外れなところもあるかもしれない。また法律についても、当然であるが専門家ではないので、いろいろと素人っぽいことを言うかもしれないが、一応気持ちだと思ってお聞きいただければと思う。
まず、今日の聴取項目に沿ってお話しさせていただく。
問1として、天皇の役割や活動についてどのように考えるか。これについての私の考えであるが、我が国の文化と歴史の時の流れと美徳を、そのたたずまいを通じて内外に示す存在ということである。長きにわたり権威として存在し続けることで、権力者たちが一定の良識を保つための重しとなってきたと思っている。政治情勢にかかわらず、常に安定した権威としての存在だと思っている。
問2、皇族の役割や活動についてどのように考えるかということであるが、天皇と共に皇族方も、我が国の文化的存在として、我が国の美意識や価値観を示す存在だと思っている。特に文化交流においては内外共に関わる人々への励みと支えになっていると思う。もしも皇族という存在がなければ、権力者、権力者という言い方はおかしいかもしれないが、権力者とその家族が権威になるわけである。国際交流のホストやホステスは例えば大統領とその夫人が務めるという形になる。これには継続性がなく、しかもその時々の政治的対立が交流を妨げるケースも生じる。だから、政治的事情を超越した皇族の存在は安定と信頼を生むと、そう思っている。
問3、皇族数の減少についてどのように考えるかということだが、これはもう危機的状況だと思っている。原因として特に大きいのは、戦後の人為的な皇族減少だと思っている。
問4、皇統に属する男系の男子である皇族のみが皇位継承資格を有し、女性皇族にそれがないという、それについてどう考えるかということであるが、まず男系男子のみが皇位継承資格を持つということについて、史実と思われる過去まで遡って、約1,700年間男系男子優先、時として男系女子もあるが、それを守り続けてきたことの重みはあると思っている。先人たちは、しかるべき男子が見当たらない場合も、非常に苦労して先代、先々代の天皇ゆかりの男系男子を探し出して、天皇位につけた歴史がある。なぜそこまで男系にこだわるのか。近年、Y染色体説とか言われているが、当時の科学知識では当然これは分からない。だから、なぜなのか、正確な理由は分からないが、とにかくそうしてきたのだとしか言えない。権力指向が高じて権威まで自らの手にしたいと考える男子を排除するためには、万世一系で通すのが有効だったと思われる。本当の、真の理由は分からなくても、今、現代の常識という名の下で、長い歴史の営みを変えることには、私はちょっと畏れを感じている。
それに伴って、女性皇族は婚姻に伴い皇族の身分を離れることについてであるが、女性皇族が結婚なさってその夫も皇族となれば、権威を得る手段として女性皇族を利用する男性が出現しないとは限らない。これはすごく、もう本当に古めかしい心配で、笑われそうなのだが、長い歴史の中ではそのような不安が現実となりそうな事例もあった。
ただそのことだけが理由ではなく、女性には、精神的にも立場の上でも男性より自由度の高い人生を選ぶ権利が与えられていると、そういう見方もできると思う。そもそも皇族方には現代一般人が持つ基本的人権がない。職業選択の自由を始め、人生の選択肢がほとんどない人生を送る立場である。こういうお立場について一般人が物申すときは、現代の男女同権を持ち出してもちょっと筋違いだと思っている。権利と義務でいえば、義務、そして使命感の人生と思える。それも全て権威となろうとする他の男性の野心を遠ざけるために先人たちが1,700年以上死守してきたのなら、その重みは真摯に受け止めたいと思っている。
問5、内親王・女王に皇位継承資格を認めることについてはどのように考えるかということだが、女性天皇は歴史上認められてきたし、各女性天皇は立派に務めておられると思う。男系女子に皇位継承資格はあって当然だと思っている。しかし、現代において、結婚なさった場合について、その御夫君やお子様ができた場合のそれぞれのお立場についての取り決めを先にまとめておかないと、波乱を招くと思う。この問題は先に夫、子供の立場について多くの国民の理解を得られなければ、決められないことだと思っている。継承順位については男系男子優先、男系男子が存在しなくなった場合を考えて、いろんなケースごとに準備をしておくことが望ましいと思っている。いろんなケースと言っても、じゃあそれでどうするかという細かいことまで私は考えているわけではないが。
問6、皇位継承資格を女系に拡大することについてはどのように考えるかということであるが、ちょっと私は勝手に心配しているが、女系天皇と女性天皇の違いを国民の全てが詳しく知っているとは思えない。一般のアンケートは 100%参考にならないかと思うが、アンケートなどでは「その違いをよく知らない」という答えもいまだに多い。よく知らなくても何となく「男女同権」とか、「女性の力を生かす」というイメージで女系天皇をよしとする気持ちになっている人もいらっしゃると思う。国民の声を参考にするのであれば、これをここで言ってもしょうがないが、誤解を招かないような設問の仕方をメディアには願いたいなと、はらはらしながら思っている。
ただ、男系男子が1人も存在しなくなった場合を考えて、いろんなケースごとに準備をしておくことが望まれるし、もし仮にもう女系天皇しか選択肢がないというような状況になれば、女系天皇、これは新しい王朝という事態になるわけだが、それを受け入れること、これは覚悟が要ると思うが、考えておく必要があると思う。
問7、内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することについてという御質問だが、内親王・女王は皇族としてお生まれになった方々である。皇族というくくりが生まれというものを条件とするのであれば、どなたと結婚なさろうと本来は一生皇族のままというのが私の感覚である。一般人と結婚し、初めて苗字を持っても、御本人の出自は「内親王」・「女王」なのでそのまま名乗っても不自然ではないが、今の法律上問題があるなら「皇女(こうじょ)」若しくは「皇女(ひめみこ)」がよろしいかと。ちょっと「ひめみこ」は古い言い方で申し訳ないが。
配偶者や子供の立場は、これまでの考え方をそのまま生かすのであれば、一般人のまま。もし新しい形にするのであれば、もうこれは皇族扱いとするのが自然だと思う。新しい形というのは、つまり、もし女性、男性関係ないということであれば、今、男性皇族と結婚なさった女性は皇族になられるわけだから、皇族扱いとするのが自然だと思う。
問8、婚姻により皇族の身分を離れた元女性皇族が皇室の活動を支援することについてであるが、皇族の減少により、公務や行事参加などのお務めが少数の皇族だけでこなすには無理があると思う。昔よりもおそらく御公務の数も増えているんじゃないかなと思う。既に皇族の身分を離れた元皇族の方に皇室活動を支えていただくのは自然な形だと思う。
ただし御本人たちの御希望やお考えもあるので、既に一般人でいらっしゃるので、基本的人権により職業選択の自由はある。そう考えると、丁寧にことを運ぶ必要があると思っている。
問9、皇統に属する男系の男子を皇族とすることについてはどのように、ということであるが、養子縁組も含めての質問だが、これについては、戦後の GHQ の方針により皇籍を離れた元皇族方に戻っていただくことが自然だと私は思っている。
「もう70年もたっている」という声もあるが、長い歴史から見ればまだたったの70
年である。また、戦後の事態は人為的、強制的になされたことであり、昭和天皇や御本人たちの意思に基づくものではないと思う。それを考えれば、元皇族のどなたかに復帰していただくのは自然だと思っている。
問10 として、安定的な皇位継承を確保するための方策や対応方策として、そのほかに何があるか。本当に、何かあれば誰も苦労しないのだが、これについては私が思っていることだが、実は今までだって安定的な皇位継承が続いてきたとは言えないと思う。
歴史を振り返ると、絶えず不安と闘いながら、先人たちは努力し知恵を絞り皇統を守ってきた。何のためにかというと、国家の安定こそ人々の安心につながると確信していたはずだと思う。
皇位継承にまつわる不安要素を解決しようと試みる事態は今に始まったわけでなく、今現在のこの状況も決して前代未聞のことではない。落ち着いて考えなければいけないと思っている。また、今行われているこのような取り組みが、今現在皇族として生きておられる方々に不安や不信を生まないよう配慮すべきと思っている。
今、現在既に、皇位継承されるはずの悠仁様が成長なさっていらっしゃる。お生まれになったときから自覚を持つようお育ちになっておられるはずである。また、内親王の皆様も現行の法の下で人生を送るおつもりで日々を積み重ねてこられたと思う。そういう方々のお心を乱さぬように進めていただきたいなと願っている。
問に対する私の考えは以上だが、ちょっと補足をさせていただく。いろいろ世間で言われていることに対して、ちょっと違うんじゃないかなと思うことがあるので付け足させていただく。
大宝元年の令で、皇位は男子を前提としながらも、女帝の子も同じ扱いとあることについて、「女系天皇を昔から容認していた」という現代的感想を持つ人もいるようだが、当時の女性皇族の結婚相手はもう皇族と決まっていたので、女帝の子供も当然男系男子皇族の子である。だから、どうしてこの大宝元年の令でわざわざ「女帝の子も同じ」と書いたのかよく分からないが、丁寧な書類を作ろうとしたのかもしれない。勝手な空想だが。
あと2つある。女性天皇である元明天皇の跡を継いだのは元明天皇の娘である元正天皇である。これを「女性から女性へのリレーだから女系」と解釈する人も中にはいるようなのだが、元正天皇の父上は皇位継承権第1位の当時の皇太子(ひつぎのみこ)、草壁皇子である。即位の前に亡くなられて、そのため天皇位にはついていないので、元正天皇は「天皇の娘」ということにはならないのだが、皇位継承権を持つ男系男子の皇女(ひめみこ)でいらっしゃった。
また、神話の話になって恐縮だが、天照大神は、素戔嗚尊(すさのおのみこと)との間で、 誓(うけい)によって子を生んだわけである。神話の世界とはいえ、これをもって「女系」とされる人もいるようなのだが、天照の子供はすなわち素戔嗚の子でもあるので、男系女系も両立しているのである。もちろん今回、皇位継承に関する考えをまとめる際に、神話時代の話には左右されない方がいいと思っている。ただし、そういうエピソードを書き留めて伝え続けてきた古代の人々の受け止め方、これを完全に無視するのは先人たちに失礼かなと思っている。
以上である。
イ 意見交換
有識者会議メンバーと里中氏との間で、次のような質疑応答があった。
・ レジュメの2ページ目に、「そのことだけが理由ではなく、女性には精神的にも立場の上でも自由度の高い人生を選ぶ権利が与えられているという見方もできる」と記載していただいているが、この点について、もう少し先生のお考えをお聞かせいただきたい。
・ こちらの勝手な感想かもしれないが、長い歴史を振り返って、どうしても男性の方が非常に宿命というものに縛られる人生を送る。これは武家社会においてもそうである。どちらかというと、女性の方が非常に大胆というか、自由な人生を送る権利を認められてきたような気がする。私の感想だが、実は、最後に補足で申し上げた神話の世界のことだが、あれは日本人の感性だと思っている。読み返してみると、驚くべきことに、あそこに登場する神々の時代の話だが、実に女性たちがしっかりと、堂々と、強い。男性たちはもちろん、天孫降臨の話からいろいろあるが、いわゆる天皇の御先祖の男性方も、結構皆さんひ弱でいらっしゃり、振り回されたり、女が本気で怒ったらくじけちゃうみたいな。日本人としてずっと長い間暮らしてきた人たちの中に、当たり前のように女性の強さと自由度、そして男性の繊細さと弱さというものを共有してきたような気がしている。それにちょっと引きずられて、こういう書き方をしたのかもしれない。私は、実は、日本で古くから男尊女卑があるとか、そういうことは全く思ってない。意外と女性は大胆に生きてきたとずっと思っている。万葉集を見ても、女性たちの残した歌の大胆さと自由度というのは本当に輝かしいものである。今、現代の考え方で、外国の反応を気にして日本が遅れてるんじゃないかとか、こんなことを言っていいか分からないが、天皇位を男性だけに絞っているのは古いとか、非常に単純な感想があるが、そうではなくて、非常に女性を大事にしてきた、女性を尊重してきた積み重ねがあると思っている。そう思っているので、ちょっと見方を変えれば、ああ女性は強く自由に生きられてよかったなあ、と思う。質問とちょっとずれた答えになってしまったかもしれないが。
・ 先生のお考えの基盤に、権力、力の部分と、権威、精神・文化的な部分を分けて考えるということがあると、お話を伺って感じた。女性の力が強かったというお話を踏まえると、男系の男子に限るという伝統は、女性が権威を握ると権威と権力が一体になってしまうのではないか、という考えからくる先人の知恵だったということなのだろうか。
・ どうだろうか。そこまで考えてこうなったかどうか分からないが、男系男子でずっと来て、それにこだわっていたわけである。そうなると、万世一系というのが一つの権威の証になるわけである。今更女系といっても遡れない。だからもう、男系男子を守らざるを得ない、権威を高めるためには。そういうこともあったかなと思う。ただし、本当に我が国は非常にうまいやり方を取ってきて、権威と権力を意図的に分けてきたと思う。それによってバランスを取って、壊滅的な内乱にまでは至らなかった。そういう、どちらかというと安定志向の価値観でやってきたのだと思う。その一環としては、万世一系という錦の御旗が、きっと非常に効果的だったのではないかなと思う。
・ 男性はか弱く、横から女性が力強く支えるという感覚には、共感するところがある。Y染色体説に関して言及されていたように、科学的な根拠を持ってやってきたわけではないものの、男系の男子であることを基礎として続いてきた。このことには、今日おっしゃったような日本人独特の男女の役割に関する考え方が影響していたのだろうか。
・ 本当にこれは想像でしかないが、天皇となるべきお方は大体もう決まっているわけである。そこで、どのようなお方が皇后として任命されるか。昔は、最初に結婚なさったお相手が皇后になるとは決まっていなかったので、即位なさるときに皇后となるわけである。大抵昔は妻がたくさんいて、その中からやはり一番しっかりと自分を支えてくれて、いざというときに代わりが務まるような、しっかりした女性を皇后として任命する。そういう考えはあったような気がする。つまり、男性は、不幸なことというか、側に付いている女性次第で務めを果たせるようになるという感じもあったか、なかったか、本当のところは分からない。当時の人に聞いたわけではないので。ただ、ここまで頑なに守ってきたからには、これでいいんだと、みんなでそう思って進めてきたんだろうな、ということだけは確かだと思う。
以上の意見陳述及び意見交換の後、座長から謝意を述べ、里中氏からのヒアリングを終了した。
(5) 松本久史氏(國學院大學教授)からの意見陳述及び意見交換
資料5 : 松本 久史 國學院大學教授 説明資料(PDF/622KB)
ア 意見陳述
座長からの紹介の後、次のように松本氏から意見陳述があった。
私は、國學院大學神道文化学部において、神道古典、例えば古事記や延喜式祝詞などを教えている。学位が神道学、専攻としては近世、近代からの神道及び国学の歴史ということになると思う。そういうことで、私の学問分野からのお話ということになる。
レジュメ・資料に基づきながらお話をさせていただく。
「はじめに」というところを見ていただきたいのだが、日本国憲法の中で天皇は、第1条、第2条に象徴・世襲であるということは明記されているのは当然のことであるが、それがまずなぜかということをやはり考えなければならない。こういう議論というものの根本を考えたいということである。
だから、他の委員や先生方とは、やや毛色が違うかもしれない。近代以降の話というのはほとんどしない。実際、古代から近世という歴史的な話になるのかなと思う。
私の学問である神道というのは、日本の神に対する信仰ということで、人々の信仰の歴史という中で、天皇というものをどう捉えてきたのかという観点、これが貫かれているということを御承知おきいただきたいというのが、「はじめに」という前提である。それから始める。
天皇とは何か、という規定は歴史上確かにほとんどない。つまり、天皇は尊いとか、象徴だというが、なぜというのは余り書かない。不文の法と言ってしまえるかは分からないが、これはある意味、暗黙の了解としてあったというふうに考えられる。
「一」に進む。象徴の問題である。象徴について、なぜなのかと学生に聞いても、憲法に書いてあるからというだけの話で、その先は答えられないことが多い。それを私がこうだよというふうに言っているのを、今日そのまま申し上げる。
例えば、天皇について規定したものには、江戸時代に禁中並公家諸法度があるけれども、それは単に、天皇は学問しなさい、政治にそんなに関わるな、というだけの話である。役割規定であるから、根拠規定ではない。
ところが、やはり近代になると、いわゆる近代的な国家、憲法という中で、そこをきちっと規定しなければならないというのが、大日本帝国憲法であったかと思う。余り時間がないので、資料は後で読んでいただきたい。結局、根拠としての「皇祖皇宗ノ遺訓」ということが何度も書かれている。皇祖皇宗については後で説明をする。
その皇祖皇宗、このお告文、告文(こうもん)というのを挙げてみた。つまり、憲法制定のときに明治天皇がお誓いになられたということであるが、誰に対してかというと、これは皇祖皇宗に対して誓った。つまり、神霊、神様に対して誓うという宣誓の形である。
これは大日本帝国憲法の話で、もう昔の話で、今の国家の中でこんなことはあり得ないだろう、アナクロニズムだというふうに思われるかもしれない。しかし、参考を見ていただくと、実は最近アメリカでも宣誓をやっている。これはもう歴代の慣習である。
米大統領も、宣誓で聖書に手を置いて、そして「So help me God」と言う。「神よお助けください、神よ御照覧ください」というふうにして、それで米国憲法の規定どおりやりますよ、ということを誓うわけである。これは現代でもそういうことをやっているという参考である。
そのようなことを日本は明治憲法のときにやっていたのである。話を遡らせ、古代の問題になるが、天皇の性格というか根拠について規定はしていないといっても、古代の文献の中でそれを垣間見るのが幾つかあるということで、資料の1ページから2ページ目の「公式令(くしきりょう)」というもの、2ページ目の「万葉集」、それから「宣命(せんみょう)」、そして「延喜式(えんぎしき)祝詞(のりと)」というものを挙げておいた。
大体ここら辺は奈良時代から平安時代における文献であるが、法制度的には律令や延喜式というのは、いわゆる国家の法制度の中であり、それから万葉は歌である。そういう中で、いろんなところで、天皇についての規定をしているわけではないが、やはり天皇というものは神であるということを言っている。
公式令のところであるが、「明神(あきつみかみ)」という言い方をしている。それから、「大君は神にしませば」が万葉集である。宣命についても、「現御神(あきつみかみ)」、「かむながら」、それから「御子ながら」、「神ながら」というような言葉がいろいろ出てくる。それらの文献で、神としてこの国を治めているということが書かれているわけである。
その根本を考えると、やはり基本的には古事記、日本書紀に行き着いてしまうわけである。日本の文献として残っているのは、これが一番古いわけであり、これ以上遡りようがないわけだが、そこにおいて、いわゆる天孫降臨という神話がある。そのときに、まさにこれは皇祖アマテラスオオミカミから、皇孫である、これが皇宗になるが、ニニギノミコトに対しての詔(みことのり)、神勅(しんちょく)が下される。
これは古事記も日本書紀もほぼ同じ意である。アマテラスオオミカミの子孫である皇孫が、永久に常しなえに国を治めなさいという、そういった神勅が、命令が下ったんだというふうに書いてある。
だから、実際その根拠というのは、実際そこまで遡らないと明確には出てこない。つまり、以上のとおりということであるが、アマテラスオオミカミの平安に統治せよという神意、それが代々継承されているということである。
ある意味、これが不文の法的な認識となるわけである。歴史上のいろんな学者にしても為政者にしても、ここら辺の認識がずっとあって、特にあえて言わないというのが続いていたのである。
ただし、実際これが近代の国家になるとそうはいかない。やはりこれを明文化しなければいけない。そこがやはり大日本帝国憲法であるし、告文もそうであるが、まさに「神聖ニシテ侵スヘカラス」という天皇規定につながってくるということである。
しかし、日本国憲法にはそこがやはりないのである。国民の総意として象徴であるが、なぜという部分についての説明は、総意なんだというだけの話で、根拠というのはただそうなんだというふうになっている。
私のように神格、神格化と言うと、とんでもないことを言ってると思う人が結構いるわけであるが、天皇神格化という認識は、古代からそうであり、明治憲法になって、突然天皇が神になったわけではない。これもよく誤解されていて、急に祭り上げて、何かとんでもないものにしてしまったというイメージ。これははっきり言うと、神道指令というのが敗戦後に出るが、そういった天皇についての議論を、ある意味、超国家主義、軍国主義であるというふうにしたということが実際ある。
ただし、私も大学で教えているが、神というのはかなり違うんだと。日本の神というのは、ある意味、全知全能者では全くないというふうにはっきり申し上げたいと思う。だから、神であるからといって専権的、独裁的、そういったようなもの、存在であると、天皇はそうだというふうに規定しているわけではないというふうに私は思っている。
日本の神の規定として、代表的な国学者、本居宣長の著書を引いているが、ある意味、神道の思想では我々も神である。人間も神なので、天皇だけが神ではないのである。我々が神で、その中で、神の中で尊いのが天皇だが、我々も神として共に国を造っていくというのが、ある種、神道の信仰だろうなというふうに思っている。一般的な神格化というイメージとはかなり違うと私は思っている。
それを神道神学的にということで、私の指導教員だった上田賢治がこう言っている。「カミ」信仰の中では、やはり天皇に神性を見いだす。これは当然、人間も神であるという前提の下で、天皇が神性を持っているということであり、ないわけがないのである。その中の象徴としてあるのだ、というのが一応の理解である。
「二」の憲法第2条である。次は世襲の問題である。つまり皇位が世襲されていくということになるから、当然これは先ほども言ったが、アマテラスオオミカミの子孫が皇位を世襲するということに、日本国憲法ではそう書いていないけれども、そういうことになる。
天孫降臨から神武天皇に至る日向三代というのがあるが、ニニギ、ホヲリ、ウガヤフキアヘズ、そして神武天皇というふうに続くわけだが、実はこのプロセスの中で重要なことがある。当然これは継承するから子供がいないといけないので結婚をするのだが、そのときの結婚相手がオオヤマツミ、山の神、海の神、そして神武天皇においては大国主の異名同神である大物主、国土経営の神の娘と結婚する。
つまり、そういった意味での山川草木として国土、人民というものをつかさどる神の娘と結婚することで、ある意味、神武天皇という統合された存在になるのだというふうな、これは神話を作った古代人の認識だと思う。ある意味、婚姻による自然を含めた日本の統合なんだ、それが神武天皇なんだ、ということが書かれているというふうに私は理解をしている。
だから、既に象徴といえばこの段階から象徴なんだというふうに思っている。ある意味、象徴天皇の捉え直しということになるかもしれないが、そういうふうに私は思っている。
男系、女系という問題がここにあると思う。当然、歴史的に男系であるというのは、御承知だと思う。その男系の根拠というのは、まさに天降りのときの皇孫、孫であるが、孫が男神である。それ以降、継承は男系できているということは、これは書いてあるとおりだし、歴史事実である。
そして、「ウジ」の認識、これは古代の「ウジ」という認識であるが、基本はやはり男系である。これにはいろんな諸説がある。大陸の影響があるとか、いろいろ言われているが、とにかく、男系継承ということが「ウジ」の流れであるから、皇位の男系継承というのが意味するものは、実はその天つ神の証明としての「ウジ」の証明である。天皇自体に「ウジ」はないわけであるが。つまり、男系の継承ということが、当時古代の「ウジ」認識から言えるのである。
だから、それが保証されていれば、性別というものは、実は一義的なことではない。ゆえに、歴史的には女帝は存在し得るということになる。
一方、女系になると、これは「ウジ」が変わるという認識が、やはり意識としては大きいわけである。そうすると、「ウジ」が変わってしまうと、その神勅を受けたその流れの天つ神の子孫であるのだという、ある意味、統治の正統性という問題であるが、それへの疑いが生じ得るというのが、古代からの歴史的な流れであろうかと思う。
そうは言いながらも、実はこれは飽くまで天皇の皇位継承における問題なのである。一般においては全然様相が異なる。中世以降の一般の人々においては、母系とか夫婦養子のようなものが、家の相続においては認められるように徐々になってきている。例を挙げているが、近世の大名家でも、実はそういうことが行われている。つまり、父系ではなくて、母系で相続するという例がある。それは、大名以下の庶民の中では、一般社会ではかなり柔軟に行われてきているだろう、ということである。
ところが、実は禁中並公家諸法度の中では、公家と皇室は駄目と言っている。「古今一切無之事」といって、区別されている。歴史的にそうであり、その区分は注目すべきではないかというふうに思っている。
レジュメの4ページ目であるが、性差別問題というふうにつなげていく、そういった論もあるわけであるが、私はちょっと違うと思っている。申し上げたとおりであるが、日本の歴史の中では、一般社会において、広く柔軟に相続は行われているし、現行憲法の下でも相続権というものは男女差別なくということになっている。そういった意味では、皇位の継承と一般の相続とは違うというふうにやっぱり思う。一般の家相続というものと、皇位の継承というのは、やはり区別して考えていかなければならないんじゃないかと考えている。したがって、そういった意味で、男女の問題ということと同列に考えられない、ということになるかと思う。
「三」のヒアリング聴取項目についての回答、これはレジュメに書いたとおりである
が、ざっと申し上げる。
問1は非常に大事であるが、私は、過去から未来にわたる象徴であるというふうに思う。現在だけではない。だから、そういうことを歴史に鑑みながら、そして現代の要請に合わせて、というこの2つだと思う。これを重視したい。
問2についても書いてあるとおりである。
問題は問3である。問3は、憂慮すべき状況であると認識をしている。しかるべく検討をすべきであるかと思う。
問4である。これについては、後の問題とかなり関わりがあるが、私としては、やはり歴史的な経緯というか、歴史的な問題で、現行の規定を容易に変更するということは慎重であるべきという立場を取っている。したがって、後の問もそれと関連をしている。
問5も同じようなことである。現行規定の変更については考えていない。
問6、これも大きな問題であるが、女系についてである。これも申し上げたとおりで
あり、拡大は考えられない。
問7もそのとおりになってくると思っている。現行制度の変更というのを余り考える
べきではないという考え方である。
問8については、これは現在も元皇族の方がかなりサポートされているので、柔軟に法を整備して、そういった意味でサポートをする体制を作ればいいのではないか、というふうに思っている。
それから問9①②、これも重要な問題である。歴史の立場から考えると、これは可能性があるという指摘をしておきたいと思っている。可能性が十分にあり得るので、これについては考慮をするべきではないかというふうに考えている。以上にとどめたいと思う。
そして、問10である。やはり感じることであるが、天皇、皇室というものに関する人々の知識というものが、正直に言って非常に少ない。これはもっと人々に教えていく必要がある。私も古事記などを教えているが、神道に関心のある学生でさえ、知らなかったということがかなりある。特に神話の話は、知識が少ない。
神話が客観事実かどうかという是非は別に置いておくが、そういった伝承があって、その伝承に対する信仰があるということは事実である。だから、そういった意味での長い間の天皇、皇室の歴史とか、そういったものをやはり国民が共有する、アクセスできるような環境を作る必要があると思う。そういう議論なしで拙速に進めてしまうと、とんでもない結果になるんではないのかなというふうに思っている。
だから、私が念願しているのは、そういった意味での正しいというか、何が正しいかというのは難しいが、やはり天皇、皇室に対する知識というものを国民で共有する、そういった意味の仕組みを作っていただきたいと私は念願するところである。
以上で終わりとする。
イ 意見交換
有識者会議メンバーと松本氏との間で、次のような質疑応答があった。
・ 問7について、レジュメで「いわゆる「女性宮家」の問題であろう」とあり、「配偶者・子を皇族とすることは前例がなく、新たな制度には反対」ということだが、これは言い換えると、配偶者・子に皇位継承権を与えず、皇族にもしないというような、歴史上存在したような1代限りの女性天皇あるいは「いわゆる「女性宮家」」ということには、それほど抵抗を持っておられないということか。あるいは、もし抵抗があるとしたら、どういった点から慎重であるべきか、もう少し詳しく教えていただきたい。
・ 確かに歴史的に、この1代限りの女性皇族というものや、それから当然女帝も存在する。これは十分に認識をしている。それを排除するものではないが、現行の問題、私が考慮するにおいて、やはり現状において、男系の秋篠宮様と悠仁様がいらっしゃる中で、こういう議論を進めていくということに対する若干の抵抗があるということである。理論上そういうことがあり得るというのは十分に理解はしている。
・ 皇室の重みを考えたときに、やはり国民統合の象徴として、品格・人格が求められると思われる。旧宮家の方などを皇族とすることについて、「歴史の重さを踏まえ、十分に考慮する必要があろう」というお答えをされているが、やはり、血筋ももちろん必要だが、それと同時に、皇族として、皇室としての人格とか品格というものが求められるのではないか。皇族の養子という形にせよ、一般国民であった方がいきなり皇族となるということに、国民的な理解が得られるかという点については、どのようにお考えか。
・ 多分、一般国民からすれば、いきなり何なのという話になってくるんだろうなというふうには思うが、これもちょっと長いスパンで考えられるのではないかと思う。現在の継承の中では、悠仁様まで含めれば、そしてその更に後の展開ということもあるので、今すぐにわかにこうなっていく、こうなるんだというわけではなくて、またちょっと長いスパンで考えたい。そういう中で長いスパンで考える、なかなか現代人というのは本当に短いスパンでしか考えられないわけであるが、やはりこの問題というのは長いスパンで考えたいというふうに思っているので、そういう意味で、解決し得る方法はあるのではないかと私は考えている。
・ 今の「長いスパン」について少し具体的に教えていただきたい。例えば、悠仁様がいらっしゃり、その先がどうなるか分からないとして、その時が来てから慌てたのでは間に合わないので、どういう準備をしておくか、というのがおっしゃる長いスパンの運び方ではないかと理解する。そうすると、どのような準備をしておけばいいというお考えか。
・ だから、ちゃんと問9の①②を考えていただきたいなというところである。その国民感情とか教育という問題は、そこを考える必要があるというふうに私は思う。悠仁様の後で、60 年後に考えますよということではなくて、そこを見据えて今何かアクションを起こすということではないか、というのが私の考えである。
・ 教育を含めてということか。
・ そういうことである。教育と言うとおこがましいが。あとは国民に対する理解という問題で、そこは大事かと思うので、そういうことをしっかりしていく必要があるんじゃないかというふうに思う。
・ 今の点で確認させていただきたい。先ほど、皇位継承者もいらっしゃる中で、女性天皇や女性宮家のことを考えるのは違和感を持つと言われた。ということは、現在の皇位継承を動かすことは一切ないとして、その後の問題として、言われたような、旧宮家の方などを皇族とすると同時に、例えば従来も存在した形での、男系の女性天皇などは、先生としてもあり得るとお考えである、という理解でよろしいか。
・ 本当にこれは if の話であるから、分からないけれども、御質問のとおりあり得ることは、可能性としてはある。ただしこれは歴史の if の、未来の話である。私は、そういった意味で、男系継承というものの伝統は考えてほしいと、それに対する策はあるのではないのかというのが私の趣旨である。歴史に何が起こるかわからないので、あり得ることは、まあそれは過去あったことは、これは皇室の歴史の中であるから、前例はあるというだけでとどめておく。
以上の意見陳述及び意見交換の後、座長から謝意を述べ、松本氏からのヒアリングを終了した。
(6) その他
〇 第7回会議においては、これまでのヒアリングがどのようなものであったか、どのような意見があったかということについて振り返り、整理をしていくこととなった。
〇 第7回会議については、6月 16 日(水)17:30 から開催することとなった。