私たちは、皇室の伝統的な男系継承を確保する「養子案」の早期実現を求める活動を進めています

(議事録全文)『安定的な皇位継承の在り方を検討する有識者会議』(第3回・令和3年4月21日)議事次第・配付資料・議事録

有識者会議(令和3年)

『安定的な皇位継承の在り方を検討する有識者会議』は通称であり、正式名称は『「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議』です。

議事録、資料などは次に示す内閣官房のホームページに掲載されていますが、Webでの閲覧や検索に適さないPDF形式であるため、当HPにてHTML形式に整形しなおしたものを掲載し、メディアによる切り取り・偏向報道を経ていない1次情報を広く国民の皆様に知っていただきたいと存じます。

「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議|内閣官房ホームページ
内閣官房,「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議

議事次第

第3回 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議 議事次第

日時:令和3年4月21日(水) 16:45~19:00
場所:総理大臣官邸大会議室

議事

○ 開会
○ 有識者ヒアリング
 ・今谷 明  国際日本文化研究センター名誉教授
 ・所  功  京都産業大学名誉教授
 ・古川 隆久 日本大学文理学部教授
 ・本郷 恵子 東京大学史料編纂所所長
○ 第4回会議における有識者ヒアリング対象者
○ 閉会

配付資料

資料1 : 有識者ヒアリングの開催について(PDF/124KB)

資料2 : 今谷 明 国際日本文化研究センター名誉教授 説明資料(PDF/292KB)

資料3 : 所 功 京都産業大学名誉教授 説明資料(PDF/4,520KB)

資料4 : 古川 隆久 日本大学文理学部教授 説明資料(PDF/546KB)

資料5 : 本郷 恵子 東京大学史料編纂所所長 説明資料(PDF/325KB)

資料6 : 第4回会議における有識者ヒアリング対象者(案)(PDF/158KB)

参考資料: 新田 均 皇學館大学教授 補足説明資料(PDF/175KB)

議事録

「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議(第3回)議事の記録

1 日時:

令和3年4月 21 日 16:51~19:02

2 場所:

総理大臣官邸大会議室

3 出席者:

・「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者 会議メンバー

大橋 真由美 上智大学法学部教授
清家 篤   日本私立学校振興・共済事業団理事長 慶應義塾学事顧問
冨田 哲郎  東日本旅客鉄道株式会社取締役会長
中江 有里  女優・作家・歌手
細谷 雄一  慶應義塾大学法学部教授
宮崎 緑   千葉商科大学国際教養学部教授

・政府側出席者

杉田 和博  内閣官房副長官
岩尾 信行  内閣法制次長
山﨑 重孝  内閣府事務次官(皇室典範改正準備室参与)
池田 憲治  宮内庁次長
大西 証史  内閣総務官(皇室典範改正準備室長)
溝口 洋   内閣審議官(皇室典範改正準備室副室長)

4 会議の内容

(1) 開会

座長から、本日の会議について、以下のような説明があった。
・ 本日は、第2回目の有識者ヒアリングを行う。
・ 国際日本文化研究センター名誉教授の今谷明氏、京都産業大学名誉教授の所功氏、日本大学文理学部教授の古川隆久氏、東京大学史料編纂所所長の本郷恵子氏の4名の方から順に御意見を伺う。
・ 各ヒアリング対象の方から20分程度御意見を伺い、10分程度意見交換を行う。
・ 意見交換では、第1回の会議で決定した10の聴取項目にない事項も自由に質問していただいて結構である。

(2) 今谷明氏(国際日本文化研究センター名誉教授)からの意見陳述及び意見交換

資料2 : 今谷 明 国際日本文化研究センター名誉教授 説明資料(PDF/292KB)

ア 意見陳述

座長からの紹介の後、次のように今谷氏から意見陳述があった。

象徴天皇制というのは戦後 GHQ に押し付けられたような、確かにそういう一面もあるが、実は幕末以前に長い伝統がある。これについては、貞明皇后が、そんなに騒ぐなと、明治前の時代に戻るだけだからとおっしゃって。九条家出身で、さすが摂関家出身の女性でやっぱりわきまえておられたところがある。実は天皇家が、権威と権力に、人格的に分裂して権威的存在になったのはもう早く、平安時代の前期である。おそるべく早い。
したがって、ヨーロッパの王政とは基本的に違う。つまり、権威的な存在に特化して、数百年、800年間くらいであり、「君臨すれども統治せず」というのはイギリスで言われるが、実は日本が世界の先輩と言ってもいい。平安前期の嵯峨天皇の頃から、嵯峨天皇の晩年、だんだん政治をされなくなって、有名ではないが、藤原緒嗣という優秀な重臣が徐々に執政するようになってきた。藤原緒嗣の一族から良房、基経と執政者が伝わり、それで摂関制になっていく。

摂関制のことは教科書に出ているが、実は大事なのは、王権の代行である摂政と、王権の補佐である関白とでは、摂政の方がはるかに高いということだ。王権の補佐というのは家臣であり、非常に低い。だから、摂政と関白は隔絶した地位だが、摂政経験者の前官礼遇として関白が出てきた。さらに、摂関に適任者がいない場合は、d の③内覧・一上(いちのかみ)・准摂政というようなポストが出てきた。出そろったのが900年代の後半である。

藤原道長という有名な人だが、あの人は関白に一度もなってない。天皇から関白になれと何回も勧められたけれども。というのは、摂関は公家の会議に出られない。関白になってしまうと、太政官政治から浮き上がってしまう可能性があるので、道長も終生関白にはならなかった。だから、御堂関白なんて言っているが、関白にならず、内覧でずっと過ごした。内覧と、一時、准摂政。准摂政というのは天皇が御病気の間だけ就任する大臣の地位である。一上というのは、摂関、内覧、適任者がいない場合の筆頭大臣が一上。例えば、イギリスの近代の首相は、第一大蔵卿 First Lord of the Treasury と訳している。大臣の第一人者というか、そんな用語は実は日本の平安時代にできている。一上で。

このように政治は関白、それから院政時代の上皇、さらに幕府ができてから征夷大将軍に任せる、こういうふうになってきて、天皇は全く政治をなさらない。それで、実は800年から1000年近く続いてきたということなので、日本の象徴天皇制というのは、非常に長い伝統、諸外国に卓越した長さがあるということは言えるかと思う。

摂関で藤原氏がよくわきまえていたのは、天皇の権威という非常に重大なものを自分たち藤原氏が侵してはいけない。したがって、それを徹底するために日本紀講筵(にほんぎこうえん)といって日本書紀の研究会を何度もやった。

さらに、ここに書いてあるように、如在(にょざい)の儀といって、天皇は亡くなられても生きておられるようにして、いったん太上天皇になっていただいて、それから崩御を発表される。だから、村上天皇の次の冷泉院以降、天皇といわない。冷泉院と。それが江戸時代の中頃まで。だから、天皇の諡名(おくりな)(亡くなったときの称号)を何々院ということで天皇号が続いている。

それから、日月蝕の妖光というのは、日食・月食の禍々しい光を天皇は浴びてはいけない。どうしたかというと、大きなむしろを内裏にかぶせて、天皇の居所に、そういう妖光を避けるというようなこともやっている。天皇が摂政・関白以下と全く別の、ほかの皇族とも別の飛び抜けた権威であるということを強調するために、こういう儀式が行われるようになった。

だから、鎌倉幕府とか、室町、江戸の幕府などでは、ほとんど天皇の地位には変化がない。実際これほど精緻な、天皇が政治をなされなくて、権威的存在でいるということの精緻な制度は、平安前期の 200 年間に確立した。これは驚くべきことで、私も最近気が付いた。教科書では、だんだん天皇が衰えて、戦国から江戸にかけてくらいが象徴天皇の境目だと以前は考えていた。そうしたら、そうじゃない。実は平安時代の前半に、もうこういうことが制度的にきっちり固まって、政治は藤原氏あるいは源氏以下の征夷大将軍、天皇は一切政治をなさらない、こういう体制になったわけである。

①の最後のところに、天皇が不在で大騒動になった事例というのが2つ書いてある。1つは有名な平家の都落ち。2つ目が南北朝内乱の観応の擾乱。平家の都落ちの場合は、安徳天皇が三種の神器を全部抱えて逃げ出したので、京都で天皇の立てようがなくなった。しかし、1箇月から2箇月経つと、あらゆる公事というか、京都の政治が渋滞して、治安が悪くなるというので、1箇月余りで何とかしなきゃいけないというので、三種の神器をほっておいて、安徳天皇とは別に新しい天皇を立てることになった。立ったのが後鳥羽天皇。後鳥羽天皇は三種の神器を帯びておられないで天皇になった。非常に珍しい例だが、それが先例になる。三種の神器はもう源平の合戦の途中から皇位の絶対要件ではなくなっているのである。

1350年、南北朝の観応の擾乱は、正平一統の後、京都を幕府が占領して回復するが、結局このときも北畠親房の措置で、皇族以下が南方に連れ去られた。北朝は天皇は立てようがないということになったが、平家の都落ちに倣って、このときどうしたかというと、天皇のおばあさんを担ぎ出して。おばあさん、広義門院という女性であるが、皇族じゃない。藤原氏の摂関家の出身の女性で、おばあさんの広義門院を担ぎ出して、彼女を治天の君、つまり、院政の一番偉い人に仕立てて、孫に当たる後光厳天皇というのを即位させた。

非常に珍しい例だが、この時期から、要するに権力者というのは京都を占領すれば天皇を立てられるということになった。三種の神器はなくても構わないと。こういうふうに制度的になったわけである。しかし、天皇にされた以上は、先ほど言ったように、日月蝕の妖光は浴びてはいけないとか、如在の儀ということで、権威は絶対化が図られた。そのまま江戸時代も続いて幕末に至るわけである。

かいつまんでお話ししたが、問2以下の方に入る。皇族の役割・活動をどう考えるか。これは以前のヒアリングでも申し上げたことだが、天皇の相談相手、親戚付き合いというのが絶対必要であり、皇太子等への後見の問題、外国訪問その他もあるが、宮家というのが必要である。悠仁様一人になっては困るので何とかしなければいけない。

問3、それに関連して、皇族数の減少をどう考えるか。現状のまま推移すると、いずれ悠仁様一人になってしまって孤立される。したがって、早急な対策が必要であると思われる。

問4、皇統に属する男系の男子である皇族のみが皇位継承資格を有し、女性皇族は婚姻に伴い皇族の身分を離れるとしている現行制度の意義をどのように考えるか。御承知のように、先ほど述べたように長い伝統と歴史があり、これを変えていく、皇位継承資格者を変えていくというのは大変なことであるが、とりあえず女性宮家の創設などは必要であろうと思われる。

問5、内親王・女王に皇位継承資格を認めることをどのように考えるか。その場合、継承順位をどうするか。現在の私の立場は、女系は国民的な議論も必要で、すぐに慌てて結論を出すよりも、しばらく国民的な議論を続けた方がいいという立場で、いずれ悠仁様が成人されて御結婚され、あるいは、践祚、即位されて、相当の日数が経っても皇子が生まれないという段階になってからどうするかというのを決めなきゃいけないというふうに思っている。

しかし、その準備として、もし女系にする場合は、ヨーロッパのどういう国の先例、あるいは伝統を使うかというようなことが問題となる。ヨーロッパでも差異があるようなので研究が必要であると。やはり、ヨーロッパの王室の歴史に詳しい方を、こうしたヒアリングでお呼びになって議論された方がいいんじゃないかと私などは思う。

問6、皇位継承資格を女系に拡大することについてはどのように考えるか。その場合、皇位継承順位についてはどのように考えるか。今言ったように、悠仁様の即位後、皇子が出生されなくて晩年に至るような事態になって初めて決定する必要が出てくる。それ以前は国民の議論を喚起し、行方を見守るべきだという立場なので、これ以上は申し上げにくいということである。

問7、内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することについてはどのように考えるか。その場合、配偶者や生まれてくる子を皇族とすることについてはどのように考えるか。皇位継承権抜きで皇族として待遇することは可能であろうかと思う。先ほども言ったが、女性にはとりあえず女性宮家という場合でも皇位継承権は棚に上げて、飽くまで天皇の親戚として、宮家を作ることが必要である。宮家がどんどん減って、皇族も減っていくわけなので、やむを得ないことじゃないかと。

問8、婚姻により皇族の身分を離れた元女性皇族が皇室の活動を支援することについてはどのように考えるか。1つ例を挙げると、黒田清子さんの伊勢斎王御就任の例である。伊勢斎王というのは、本来平安時代以来、独身の内親王か女王、少なくとも独身の女性で、皇族でないとできなかった。しかし、黒田清子さんが既に斎王として務めておられるので、皇室の御活動の支援は、その例からして、一向に構わないのではないかと個人的には考える。

問9、皇統に属する男系の男子で、①、②と皇位継承順位についてどのように考えるか。ここで御参考までに申し上げておくが、先ほどの平家の都落ちのとき、どうやって決めたかというと、実は以仁王の子供を、木曾義仲が強引に、手柄があったんだから北陸宮を天皇にしろ、と圧力をかけた。朝廷はどうしたかというと、安徳天皇に一番血縁の近い、安徳天皇の弟に当たる異母弟の後鳥羽天皇をつけたわけである。であるから、複数候補がある場合は、前の天皇と血縁が一番近いのを選んでいるというのが原則で伝統である。

したがって、例えば伏見宮、戦後、GHQ の圧力もあって民間に降下された伏見宮に連なる11宮家の男性が残っておられる。そういう方の中から、自分は皇族になってもいいと、あるいは将来天皇になるかもしれない、そういう皇族になってもいいとおっしゃる方がおられるのかどうか。そういうのを調査くらいはした方がいいと思うが、先ほど言ったように、複数候補の場合は血縁が近いもので選ばれてきている。なので、南北朝に遡る、三十何世代離れている、室町時代と何百年離れている王統、伏見宮の一族を皇族にして良いかどうか、非常に微妙なところというか、私はなかなか難しいと思うが、そこの判断をしなきゃいけない。

1つは、伏見宮家というのは幕末から明治初めまで、永代宮家として認められてきた宮家である。他の宮家と違って特別な宮家である。だから、皇統に準じた宮家ということで、例外的に明治の典範改正で皇族に入れられた。それが戦後、臣籍に降下された。それをまた戻すことについてどうなのか。しかし、悠仁様にもし皇子がなければやむを得ない。そこの判断をどう考えるかというのが非常に難しい。それが伝統にもとるものなのか、あるいは伝統から離れ過ぎか、そこの判断をしていただかねばならぬ。私の場合どう考えるか、歴史学をやっている者として申し上げにくい。

最後の問10だが、昔は側室制というのが前提にされていて、しかも、足利とか徳川の家を見ると、5代から6代くらいで、男子で継ぐということが難しい。それが今の天皇家、新井百石が定めた閑院宮の養子からずっと9代男系が続いている。非常に奇跡的なことである。しかし、悠仁様の後どうなるか。側室制を前提として、なおかつ非常に継承が難しかったことをどうやって維持していくか。ここに書いたように、近代医学の粋を尽くして男子出生を目指すというような医学的なことは当然おやりになったほうがいいと私には個人的に思う。しかし、これはあまり公には出せないことだが、個人的には側室制の代償として近代医学の技術を入れた皇位継承があるべきだというふうに考える。以上かいつまんで申し上げた。雑ぱくな回答だが、以上である。

イ 意見交換

有識者会議メンバーと今谷氏との間で、次のような質疑応答があった。

・ 皇位継承の正統性の源泉として男系継承ということが一般に言われているが、皇位継承の正統性と男系継承というものの歴史的なつながり、起源、あるいは重みというものをどう理解したらよいか。
・ 歴史をやっている者として、どう考えるかということでよろしいか。それは非常に難しい問題で、私もここに来る前から散々悩まされてきた。私ごとき知識の者ではとても簡単に結論を出せない難しい問題である。しかし、申し上げたように、800年から1000年くらい制度で固められてきているという伝統の重みは簡単には崩せない。何とか悠仁様に皇子がお生まれになれば、男系でしばらく行けるところまで行くんじゃないかというふうにも思う。ただ、議論として、早くからもっと準備として、女系の天皇・皇族の在り方、どうなるかということを議論することはあり得るかと思う。私の立場は、やはり歴史を見ていると、とにかく伝統で行けるところまで行く、ということしか申し上げにくい。回答になっているかどうか分からないが。

・ 補足の質問だが、最近の歴史学の研究では、古代においては双系であったという研究者もいるようであり、ある時点から、律令制ができる過程の中で男系になっていったとも言われている。歴史の伝統の重みを考えたときに、この双系というものを、どのように理解すればよいか。先生のお話では、やはり歴史的な伝統という観点からは、男系継承というのは非常に重いということか。
・ 奈良時代に称徳天皇まで女帝があったわけだが、称徳天皇のときに道鏡の問題が出てきて、ああいうことから藤原氏はしばらく女性を出すのは無理だと、はっきりは書いていないが、臣下がそういうふうな統一見解を出したように思う。平安時代に入ると、奈良時代以前とはそこが変わっている。だから、奈良以前に戻すのか、あるいは平安以後の伝統を重んじるか、そこの考え方だろうと思うが、私はそこまで準備はしていない。

・ 関連して、いわゆる正統性、legitimacy について、歴史上では先生のお話のように三種の神器がなくても即位ができるとか、庶子でもいいということもあったが、即位した天皇の正統性は何をもって保証・担保されていたとお考えか。
・ 結局、血縁、つまり、天照大神の御子孫の正統な血縁の男子だと。そこが決め手だが、先ほど言ったように、三種の神器がだんだん皇位継承の要件から外れていくというようなことは歴史的な経過によるもので、大原則じゃなかった。だから、私としては三種の神器を高く評価する、絶対要件だという見方を取っていない。実際、鎌倉時代、江戸時代はそうである。

・ 女性宮家について言及があったが、女性宮家というのも範疇が曖昧であるが、これまでの宮家をどなたかに継いでいただくのか、それとも新しく宮家を作るのか、具体的な、想定していることを教えていただきたい。
・ 1つは今の皇族、内親王のうちから女性を立てるというのと、養子を迎えて、例えば、その養子に伏見宮家の旧皇族を立てることもあり得るだろうし、あるいは、そうでなくても、姻戚関係の女性を皇位継承権がある・なしは別で、そこは難しい問題であるが、当面、女性宮家として。宮家は少なくなると困ると。だから、私は、黒田清子さんのような民間へ一遍下られた方も待遇として戻っていただいて、御主人の黒田さんも准皇族として皇位継承権はないけれども皇族に準ずる扱いのような形で、お仕事はそのまま皇族になっていただくのはあり得るんじゃないかと。そのくらい危機感を持ってやらないと駄目なんじゃないかと。
というのは、平安時代の精緻な制度も、準用、準用で、准摂政とか准関白というのがあるように、杓子定規に来たものじゃない。その都度その都度、藤原摂関家、貴族たちは、準用、準用で最大限、天照大神の血筋を侵すことなく、それ以外のことは準用、準用で柔軟にやってきている。新井白石の閑院宮家の創立もそうだが、日本の政治家の、一番大事なのは、皇位継承をどうするか。だが、戦後、全く70年間、政治家は気が付かなかったというか、油断していたというか、この怠慢は私らにとって許せない。そのツケが今来ているわけで、非常に難しい問題だと。

以上の意見陳述及び意見交換の後、座長から謝意を述べ、今谷氏からのヒアリングを終了した。

(3) 所功氏(京都産業大学名誉教授)からの意見陳述及び意見交換

資料3 : 所 功 京都産業大学名誉教授 説明資料(PDF/4,520KB)

ア 意見陳述

座長からの紹介の後、次のように所氏から意見陳述があった。

皇室制度の問題について、私は平成17年、24年、28年の有識者会議に招かれ、各ヒアリングで意見を述べさせていただいたことがある。ただ、今回も時間が限られているので、あらかじめ自分なりの考えを先に申し上げた後、こちらから示された全10問のお尋ねにお答えする、という形を取らせていただく。

まず第1に、安定的な皇位継承については、男系の男子を優先して、男系の女子まで容認しておく必要がある、と考えている。ついで第2に、皇族女子の在り方については、男子不在の内廷と宮家において相続も可能とし、公務を分担し続けていただく必要があると考えている。

次に第3に、婚姻後の元皇族女子に関しては、天皇や皇族の公務を助けるため、内廷の職員として分担し続けられることが適当だと考えている。さらに第4に、元宮家の男系男子に関しては、もし本当に適任者があれば、男子のない宮家の養子とすることも検討されたら良いだろうと思っている。最後に、お尋ね以外のことだが、このような改善策を実現するには、特例法のような形で、とりあえず補正措置をとれるようにするのが妥当だと考えている。

このような管見について、以下、お尋ねのあった10問に即して申し上げたい。4ページのレジュメを用意したが、それをも少しはしょって申し上げることを、ご容赦いただきたい。

まず第1問は、天皇の役割や活動についてどのように考えるかというお尋ねである。

現在の天皇については、ご承知のとおり日本国憲法が、第一章を「天皇」とし、第 1条に国家・国民統合の象徴という至高の位置付けと重大な役割を定めている。したがって、象徴天皇は、その役割を果たすために、日本の国家を代表して憲法に記される国事行為を行うとともに、国民統合にふさわしいことを公的行為としてお務めになるのみならず、国家・国民のために祈られる祭祀行為など、多様な活動を誠実に実践されている。しかも、憲法の第2条に「皇位は世襲のもの」と定められているので、その役割と活動が代々の天皇により受け継がれ続いていく。それによって、日本国内だけでなく海外の人々からも信頼と尊敬を受けられる、という意義は極めて大きいと思われる。

次に第2問は、皇族の役割や活動についてのお尋ねである。

皇族とは、現在の皇室典範の第5条と第6条などに定義がある。また第1条で、男系の男子たる親王と王は皇位継承の資格を有すると限定しながら、第17条で、それ以外の成年皇族も摂政就任の資格が認められている。したがって、どの皇族も成年後は男女を問わず、天皇の公務を分担する立場にあり、事実、それを様々な形で果たされているとみられる。

また、現行の皇室経済法には、天皇に最も近い、いわゆる本家に当たる内廷の費用は内廷費を充てるとし、それ以外のいわゆる分家に当たる宮家の費用は皇族費で賄うとともに、皇室を離れる方にも「皇族としての品位保持の資に充てる」一時金を出すことなどが定められている。したがって、内廷の皇族も宮家の皇族も、それにふさわしい教養を身につけられ、品位を磨いて公務に励むことが期待されており、それを行っておられるとみられる。

次に第3問は、皇族数の減少についてどのように考えるか、というお尋ねである。

皇族だけでなく一般の国民を見ても、晩婚化・少子化が急速に進んでいる。それでも、一般国民の場合は、女子であっても養子に入っても、家職や家産を相続することができる。しかし、皇族の場合は、現在の皇室典範によって、女子は一般男性との婚姻により皇籍を離れなければならず、また、皇族間で養子をすることができない、という規定になっている。そのために、後継男子のない宮家は早晩衰滅するほかない状況にある。

戦後の皇室典範では、一夫一婦制を自明の前提とするゆえに、側室も庶子も否定していることなどから、内廷でも宮家でも複数の男子を得ることが難しくなってきたのだと考えられる。

次に第4問は、皇統に属する男系の男子である皇族のみが皇位継承の資格を有し、女性皇族は婚姻に伴い皇族の身分を離れること、としている現行制度の意義をどのように考えるか、というお尋ねである。

これらの現行制度は、旧皇室典範の原則を引き継いだものである。しかし、このような旧制を固守することには無理があって、維持困難な状況にあるとみられる。

念のため、明治の皇室典範と帝国憲法ができるまでの動向をみると、皇位継承の資格を男系男子に限らず、母系も女子も認めておく案とか、また側室庶子を認めるのは不適切だというような意見もあった。しかしながら、いわゆる男尊女卑の傾向が強い当時の日本では、男性の上に「女主」を推戴し難いとか、また男子を確保するには側室も否定し難い、というような主張が通り、成文化されるに至ったのである。

それに対して戦後は、日本国憲法で一般国民に男女平等を定めても、特別身分の皇族に関しては皇室典範で皇位継承の資格を男系男子に限定するような行き過ぎた規制を設けており、これは少し緩和する必要があると考えられる。

次に第5問は、内親王あるいは女王に皇位継承の資格を認めることについてはどのように考えるか。その場合、皇位継承の順位についてどのように考えるか、というお尋ねである。

歴代の皇位は、皇統譜の大統譜によると、神武天皇以来ほとんど男系男子により継承されてきた。しかし、第33代の推古女帝が擁立されており、また、大宝元年成立の継嗣令には、男帝を前提とする規定の本注に「女帝の子亦同じ」と定めている。つまり、男性天皇を優先しながら、女性天皇も公認していたのである。ただ、実際に即位された8方10代の女帝は、寡婦か未婚で独身を通されたから、当代限りで終っている。

したがって、万一の事態に備えるために、男系男子限定を改めて、男系男子を優先しながら、男系女子まで公認することは可能であり、また必要だと考えられる。その継承順位については、現行典範の第2条を準用して、長系を先にし、同等内では男子を先にし女子を後にすることが、当分穏当だと思われる。

次に第6問は、皇位継承の資格を女系に拡大することについてどのように考えるか。その場合、皇位継承の順位についてはどのように考えるか、というお尋ねである。

皇位継承の資格は、天照大神を皇祖と仰ぎ神武天皇を皇宗と伝える子孫のうち、皇族の身分にあることが本質的な要件であり、生物的な男女別は派生的な要素とみられる。

ところが、歴史的には、古代中国の儒教などが絶対視する父系、つまり男系尊重の思想的な影響により、その継承は皇宗以来いわゆる男系で一貫しており、大部分が男子である。したがって、このような千数百年以上にわたる慣習は、当分重視する必要があり、皇位継承の資格を今の段階で女系にまで拡大すれば、不安や混乱を招くおそれがあると思われる。

次に第7問は、内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することについてはどのように考えるか。その場合、配偶者や生まれてくる子を皇族とすることについてはどのように考えるか、というお尋ねである。

この点、現行の憲法と皇室典範の下では、皇室費の受給対象となる皇族と、婚姻により皇族を離籍して一般国民となる人々が峻別されている。したがって、今までどおりならば、内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することは原則としてできない。とはいえ、皇族数の減少により、皇族としての公務を分担することが困難になりつつある現在、皇室で生まれ育って培われた品性を保つ方々が、公務を支援できるようにする方策は必要だと思われる。

とりわけ、現に皇族女子として重要な内廷におられる皇女の敬宮愛子内親王殿下は、今年12月に成年皇族となられるから、公務を分担されることが多くなるであろう。この敬宮さまは、結婚されても皇室に留まられ、御両親の両陛下を支えられるようにする必要がある。それは皇位を継承するためでなく、当代の天皇を最も身近で助けられるためであり、やがて叔父である秋篠宮文仁親王殿下から、従弟である悠仁親王殿下へ継承される天皇の公務を皇族として支え続けられるようにするためである。

その場合、皇女の夫君となられる方と、そのお子さんも、同一家族であることから、皇族の身分を認められるのが自然だと思われる。その方々は、皇位継承の資格は有しないと定めておけば、いわゆる女系にならない。

また、男子のない現存の宮家においても、皇女に準じて、お1方は当家を相続するために皇族として残れるようにしておく必要もあると考えられる。

次に第8問は、婚姻により皇族の身分を離れた元女性皇族が皇室の活動を支援することについてはどのように考えるか、というお尋ねである。

前に問7で述べたとおり、現行の典範に従って、皇族女子で既婚の元皇族、及びこれから結婚して離籍される方々にも、皇室の活動を支援してもらう必要性はあると思われる。ただ、その称号は元皇族とか「元内親王」「元女王」で良い。それらの方々に対して、天皇の息女のみを指す「皇女」という用語をむやみに拡大乱用することは認められない。

また、その位置付けは、元皇族として天皇のもとでお手伝いをさせていただく内廷の職員とすることがふさわしいと考えられる。

次に第9問は、皇統に属する男系の男子を、下記①又は②により皇族とすることについてどのように考えるか、というお尋ねである。その①は、現行の皇室典範により皇族には認められていない養子縁組を可能にすること。その②は、皇統に属する男系の男子を現在の皇族とは別に新たに皇族とすることとある。

皇統に属する男系の男子でも皇族の身分にない人々は、広い意味なら数多くおられる。ただ、ここでは狭い意味での、戦後一斉に皇籍離脱を余儀なくされた11宮家の人々を指すのだとしても、その現存男子孫は一般国民として生まれ育った人々が大部分である。したがって、そのような旧宮家の若い男子を、身分も環境も異なる皇室へ迎えられるようにして、継嗣のない宮家の養子とすることは、国民の平等を定める現行憲法に照らして、当家・当事者の立場も考えれば、極めて難しいと思われる。まして、現在の皇族とは別に新たな皇族を作るようなことは、皇統の分裂を連想させるおそれがあることから、絶対にあってはならないと考えている。

とはいえ、①の養子縁組案は、もし狭義の男系男子孫の中に現皇室へ迎え入れられるにふさわしい適任者が現われるならば、関係者に十分な了解の得られる可能性があるかどうかは、内々に検討されたら良いと思われる。

ただ、万一そのようにして皇族となり得る男子がおられても、いわゆる一夫一婦制により、必ず男子を得て相続できるとは限らないということを、考慮しておく必要があると思われる。ちなみに、旧11宮家では、一般国民となってからも男子相続を固守するうちに、既に継嗣不在により半数以上が絶家となってしまった。そのような事実も直視しておかなければならないと思われる。

最後に問10は、安定的な皇位継承を確保するための方策や、皇族数の減少に係る対応方策として、そのほかにどのようなものが考えられるか、というお尋ねである。

現在の皇室は、憲法の定める象徴世襲の天皇を中心として、男女の皇族たちで構成される特別な法的家族集団である。したがって、その主要な法律は、実際に皇室を担われる天皇と皇族たちが末永く存続し活動されることの可能なものでなければならない。その法的規制が厳し過ぎて実情に合わないのであれば、それを適切に緩和するなど、徐々に改善する努力を続ける必要があると思われる。

そのためには、今回のような特例法の附帯決議に応えて設けられた有識者会議での検討報告に基づいて、何らかの改善策が政府と国会で協議し制定されるならば、その途中か、又はそれを実施するに先立って、皇室の方々に理解、ないし了解を得るため、皇室会議の議を経る必要がある。

それのみならず、皇族と三権代表で構成される皇室会議は、今後とも皇室の在り方について常に検討を加え、改善案などを提唱できるような権威・権限のある場として運用されることが望ましいと思われる。

結びとして、最後に申し上げたいのは、今回お尋ねの範囲を超えることかもしれないが、戦後七十余年間に生じた皇室制度の諸問題に対する改革を、一挙に解決することは難しいと思われる。そうであれば、当面は大多数の合意可能な改善策を速やかに実現し、その後も検討を続けながら、状況の変化に応じて改善を重ねる努力が必要であろうと思われる。具体的に申し上げれば、今回も皇室典範の原則を残したまま、当分必要な改善策を特例法のような形で可能にすることが、今のところ望ましいと考えている。

イ 意見交換

有識者会議メンバーと所氏との間で、次のような質疑応答があった。

・ 男系女子まで皇位継承資格を認めるという考え方に対しては、抜本的な皇位継承の安定化にはつながらない、やはり女系まで認めることが安定した皇位継承につながるのではないかという意見もあるが、どのように考えるか。
・ 今おっしゃったような意見が何人かによって述べられていることは承知している。ただ、大事なことは、法的制度と皇室の方々というのは、実際に皇室におられる方々があってこそ制度も成り立つ。そういう意味で、現に今上陛下の次に秋篠宮様がおられ、更に悠仁様がおられるから、よほどの事態が生じない限り、2代先までは男系男子で続いていける。とはいえ、今から考えておくべきは、悠仁様が結婚されて、お子様をなされるということについての配慮である。幸いにして今の規定どおりに男系男子が続けられるような男子が3代先に生まれられれば、それで良いわけである。
けれども、悠仁様の結婚相手は必ず男子の生まれる方を求めなければならないという制約の下で、果たしてそれが可能なのかどうか。おそらくお妃探しは数年先に始まるとすれば、やはり当面は男系男子で行けるにせよ、3代先については、もし女子だけしかお生まれにならなくても、その方にお継ぎいただけるような余地というか、可能性を開いておかないと先が見通せないと思われる。
この先どうなるかは、実のところ誰にも分からない。今つくづく思うのは、男系男子がおられたら安心かというと、三笠宮家の場合、立派な男子がお3方おられたにもかかわらず、お父さまより先に亡くなってしまわれた。そういうことが、この医学・医療の進歩した現代でも起きていることを忘れてはならない。必ず男子が得られることを前提にして、男子だけで継ぐという規定を続ける限り、万一の事態に対処し難くなる、ということを考えての意見である。

・ 結びとしておっしゃった、実現可能なもの、当面必要なものを改正しておくとは、女性皇族が宮家を継ぐ、あるいは内廷におられる方は引き続き皇室に残られるという可能性を残しておくべきだ、という趣旨でよいか。
・ そうである。今のところの皇位継承の有資格者について、2代先まで見通しがあることはありがたい。ただ、それを支えられる方として、一番大事なことの 1 つは、今上陛下の内廷に皇女たる敬宮様がおられるにもかかわらず、今のままでは結婚されたら皇室を出られることになる。出られてからなお御公務を担っていただく方法もあり得るが、中におられる方と外へ出られた人では身分が異なる。
そういう意味で、現行制度の大筋を維持しながら、やはり皇女たる敬宮愛子様が結婚されても皇室に皇族として留まられて、御両親を身近に支えられる。さらに、叔父様や従弟に当たる方も支えていかれる、ということが望ましいと考えている。

以上の意見陳述及び意見交換の後、座長から謝意を述べ、所氏からのヒアリングを終了し、約10分間の休憩となった。

(4) 古川隆久氏(日本大学文理学部教授)からの意見陳述及び意見交換

資料4 : 古川 隆久 日本大学文理学部教授 説明資料(PDF/546KB)

ア 意見陳述

座長からの紹介の後、次のように古川氏から意見陳述があった。

時間も限られており、事前に資料を配布されているということなので、質問項目の本文については省略させていただいて、問1についてはこうだという形で進めさせていただく。

まず、問1について、大事なので一応読むと、日本国憲法の理念と規定に照らして、天皇の役割は、国民の総意という抽象的なものを行動や発言によって具体化することであろうというふうに思う。前のヒアリングのときにもそういうふうに申し上げたが、ちょっとそのとき不勉強で、その後そういうことをちゃんともう戦後早い時期に言っている法律学者の方がいたので、それを出典に付けてある。

前回のこのヒアリングなどを見ていると、祭主としての役割を本質とみるという見解を述べている方もいらっしゃるが、私は、それは日本国憲法が定められた経緯をちゃんと見ていないとか、あるいは憲法に定められた信教の自由を侵害するおそれがある考え方ではないかと思っている。

それから、天皇が権威だという、国家の権威としての役割をという御意見も中にはあるが、私は、やっぱり国民主権なので権威は国民にあると。その国民にある権威を形として表しているのが天皇なので、天皇がイコール権威と考えると、憲法の定めと少しずれてしまうんじゃないかというふうに考えている。

次に問2だが、これについてもそこに簡単に書いたように、天皇だけでは物理的に担
い切れない部分を皇族が担うことは当然あり得ることではないかと思う。

それから、問3についてだが、やはりこれも国民から象徴天皇制に対する合意がある以上は、何らかの対応を考える必要があるだろうというふうに思う。

問4について、実は男系男子の継承がずっと継続できてきた、歴史的な長い時間継続できてきた要因の一つは側室制度にあるというふうに言われているが、私もたぶん一つの要因はそうだろうと思っている。ただ、今の憲法ではもう性別による差別が禁じられている以上、側室制度は認めることができないので、現行憲法下においては男系男子継承というのは非常に前近代的な色彩が強い、過渡的な制度であったと考えざるを得ないと思う。

その上で、問5、問6だが、問5については、これは俗っぽく言えば女性天皇の容認ということと認識するが、それだけでは、そこにも書いたように抜本的な解決策にはならないだろうと考えるので、問6の女系天皇の容認とセットであればこれは認められるんではないかというのが私の意見である。

その問6のところが大事な話になるわけだが、問6は俗に言う女系天皇を認めるかどうかということだと思うが、これについて私は賛成する。

皇位継承順位についても長子優先がいいと思うが、全体としてここについては、私は2005年の有識者会議の報告書が非常によくできていると思うので、基本的にこれに賛成ということになる。

ただ、ルールの適用は、このルールをちゃんとやるためには皇室典範の改正が必要だと思うが、原則は皇室典範改正後に生まれた方から適用すべきだろうというふうに思う。その理由はそこにも書いたように、今、既にお生まれになっている皇族の方々は、今の制度を前提に人生設計されていると思うので。ただし、ちょっとそれでは間に合わないという場合は、御本人の同意が得られたらその部分から適用するということはあり得ると考える。

この有識者会議の報告書になぜ賛成するかという理由についても、この報告書の見解に全く賛成であり、非常にこのルールが一番安定しており、国民の理解と支持もあるし、世襲という伝統を維持できるということである。

しかも、その後も女性天皇・女系天皇に対する国民の支持率は非常に高い。7割、8
割という、7割を超えているということである。

それにもかかわらず、この報告書を公表以後も女性天皇・女系天皇反対論が現われてきているが、それらが成り立たないということをはっきりさせておかないとこの意見が通らないと思ったので、その話を少し付言させていただいた。

具体的には、女系天皇を憲法違反だとする見解があるが、実はこの見解の根拠になっている現行憲法制定時、つまりはそれにセットの形で皇室典範、今の皇室典範が制定されるが、そのときの帝国議会での担当大臣の答弁をみると、今までは確かに男系で維持してきたと。今もそういう考え方が、一応そういう方がいいという考え方の人が多いということであるが、でも、この新しい憲法ができることによって、そうでなければいけないという前提はもう外れたんだということが言われている、というのが、この②、③の議論である。

実は逆に、確か皇室典範を決めるときであったか、側室制度がないのはおかしいと言って今の案に反対した議員たちもいたぐらいであるが、それだけまだなかなか女性天皇・女系天皇への理解がこの時点ではなかった。しかし、そういうものに対する理解が増えればそれが絶対駄目だという論拠はないというのが、このときの帝国議会での担当大臣、金森徳次郎の見解で、これが政府の見解ということになる。しかも、先ほど申し上げたように、現在では女性天皇・女系天皇に対する世論の理解・支持は非常に多くなっている。以上のことから、憲法の規定の「世襲」と言っているところを、男系というふうに限定する十分な根拠はないだろうと思う。

それからもう1つ、民間の男性が皇室に入ることに関して、国民に全くなじみのない民間人成年男子が、結婚を介して突然皇室に入り込んでくることはおかしいという意見がある。しかし、これは戦後、皇室の男子と、それから民間の女性との結婚がずっと認められてきているわけだが、どうして女性がいいのに男性はおかしい、いけないのかということは、理論的に説明がつかないので、この意見は採用できないと考える。

ということで、問6については、2005年の有識者会議の報告書が良いということである。

次に問7に関して、これも俗に言う女性宮家のことと私は理解したが、これについては 2012年の内閣官房が作った論点整理をみても、このときの有識者、ヒアリングを受けた方々も様々な意見が出ていて、あまり意見が一つにまとまっていかないという形になっている。つまりは問題点の多い中途半端なものであって、安定的な皇位継承を確保するための抜本的な解決策にはなり得ないと思う。現在、もうあまりこのことをゆっくり考えている時間がないと考えると、この方策は正直言ってあまり意味がないと思う。

問8について、これは御本人の承諾があれば構わないと思うが、特別な地位を設けることは憲法にも違反する可能性もあるし、それは必要なく、元内親王、あるいは元女王というような肩書で、その都度必要な経費や謝金を国費で払えば十分ではないかと思う。

問9について、これはいわゆる旧皇族を皇籍に戻すというような、普通言われているような話に関わることだと思うが、私はこの①、②、どちらも好ましくないと思う。

これについても、人の意見に乗っかっているようだが、やはり 2005 年の報告書の補論で論じられていることが私は非常に説得力があるだろうと。つまり、これは皇籍離脱後、もう既に旧皇族の方も皇籍離脱後長期間経っており、もともとが直系の方々と比べると相当縁が遠い方々になる。さらに、当事者の意思や人数や手続にも課題が多く、歴史的にみてもこういう前例が非常に少ないということで、これは採用する必要ないと思う。

その上で、この方策に関する賛成論を、この有識者会議報告書にも表れている賛成論がいいかどうかということをちょっと述べたいが、例えば初代神武天皇以来の男系の血筋を継承することが絶対必要だという意見が出ているわけだが、しかし、天皇の歴史を考えると、古い方の時代については不確実なことが多い。歴史学の見解から言えば、ほとんどが事実ではないというふうに考えられている。

それから、江戸時代までは法令上は女系天皇も認められている。これももう既にいろんな方が指摘されているので、細かいことは注釈に譲るけれども、それを考えると、お示ししたようなケースの賛成論というのが、論拠が十分ではないかということである。

さらに、現在の天皇が天皇である根拠は日本国憲法であって、憲法を越えた存在ではあり得ない。そういうことを考えると、問7や8にも述べたことと関わるが、現在の憲法の理念を形骸化させかねないと思うので、実在しない天皇、あるいはそういう一種の作られた伝統のようなものを根拠にして、旧皇族の復帰が正しい、適切だという意見は、実は一つの方策のようにみえるが、日本国憲法の理念にも関わる問題点をはらんでいるということで、私はちょっとこれは採用できないと思う。

最後の問10だが、これに関して皇室活動の自由度を上げることが一つの方策として考えられるということで、具体的には2つ述べるつもりである。②のところは私が述べるまでもなく、やっぱりちょっと皇室に入るといろいろ窮屈だということで、もう入ろうとする方が多分なかなかいない。女性皇族の婚姻の問題は逆に出ていく方なので、ここの話と同一視する必要はないと思うが、入るということになるとなかなか窮屈そうで、なかなか入りたい、積極的に入りたいという人が現実問題としてなかなかいないだろうということが考えられる。

そうならないようにするためには、やはり皇室活動の自由度を上げることが必要だろうということで、⑤と⑥がその一つである。⑤の方は、これは政府がどうこうするということではないが、これは報道機関がもう少し天皇や皇室に関する自由な言論活動をするという風潮ができてくることが大事であろうと。そうすれば、言うことにあまり慎重になり過ぎずに、逆にそんなこと言っちゃだめだというような議論も、例えばイギリスのように自由にできれば、もう少し窮屈さが緩むんじゃないかというのが一つの考えである。

それから、もう1つは、⑥は皇室における自主財源の確保ということであるが、これもすごく俗っぽく、例えばワイドショーとか週刊誌のレベルで言うと、税金使ってぜいたくしてるのか、みたいなことを言われるとやっぱり窮屈になってしまうので、ある程度自助努力でちゃんと稼いでいるという形があれば、そういうことはある程度は言われないで済むところがあるのではないか。

戦前の場合は、帝国議会に制約されないために、皇室がたくさんの財産を持ってそれで運営しているところがあったが、それは今の社会では到底受け入れられない。広大な山林を所有していたとか、日本一かもしれないほどの株、債券の所有者という形では到底理解されないので、やはり社会の中で皇室がここまで続いてきて良かったと思えるようなことも含めた様々な活動、具体的なことは⑥の下の方に書いたり、あるいは注の方にも書いたが、そういう活動もある程度許容して、そういうところで皇室の自助努力で上がった収入においては自由に使って、ちょっとはすてきな服を着たり、旅行に行ってもいいということになった方が、入ってもいいという人が増えるかなということで。自由度を上げるという意味ではこういうことも考えてもいいのではないかということで、あえてちょっと申し上げてみたところである。

イ 意見交換

有識者会議メンバーと古川氏との間で、次のような質疑応答があった。

・ レジュメの問 10 の④に「世襲という点だけは残しつつも」との記載があるが、「世襲」概念の中身について、どのようにお考えか。
・ これはちょっと前の方の問6のところとも関係するが、とりあえず血筋のつながった人で継いでいくということが、一番広い意味での世襲だと思うので、そういう意味での広い意味をここでは採っている。それで、2005 年の有識者会議の報告書でも、要するに女系でも直系の方が世襲という意味はあるだろうと言われており、あの報告書の付録にもあるように、今、ヨーロッパの王室はほとんどもう長子優先という形で、でも、やはり王室ということになると結局世襲でないと、選挙で選ぶんだったら大統領になってしまうので、わざわざ王室みたいな形を残すんだとしたら、やっぱり世襲というところは外せないというときに、どこまでが「世襲」と言えるかというと、今、例えば皇室だったら王様なり、天皇なりやっている人の子どもであれば性別問わずその人がなって、その人の子どもが継いでいくという形だったら、広い意味での「世襲」と十分言えるのではないかというふうに、これはたぶん私個人というよりは一般的な考え方だろうと思う。

・ 2点先生の立場を伺いたい。1点目は、問9のところで、現行の皇室典範により皇族には認められていない養子縁組を可能とすることについて。この養子縁組について比較的肯定的な方が多くおられると思うが、民法上は認められているもので、皇室典範の第9条で認められていない。国民の権利、民法上認められているという点を前提にして、この養子縁組を認めるという考え方についてどのように考えたらよいか。
2点目は、日本の天皇の在り方の特徴として、第一に男系王朝としての血統の長さであるということも言われているが、このような伝統を尊重することが重要だという考え方について、どのように考えるか。
・ まず1点目の方だが、これ、問9で皇統に属する男系の男子をという話の中で、この養子縁組が出てくるわけで、例えば女系天皇を認めるということになれば、当然外から民間の人が入ってきて結婚されることになるので、ここでは私は要するに旧皇族の家系の人が戻るということがあまり適当ではないということの話の中で、これもまずいと言っているだけなので、例えば女系天皇を認めた場合には当然民間から男の人が入って結婚するということはあるので、それは別に問題ないし、女系天皇を認めるのであれば、だからそれがちゃんとできるように当然皇室典範も改正すべきだろうと思う。
それから、2点目の伝統の問題だが、例えば極端な話、伝統だから憲法を越えてしまっていいのかという問題があると思う。この日本国憲法に関しても、これが押し付けだとかいろんな話はあるが、実は最近の様々な具体的な研究を見ると、必ずしもそうではなくて、日本人の側であの戦争をやってしまってどうだったんだろうという思いの中から実は出てきたいろんな発想を、占領軍が取り入れてあの憲法にしているという側面が強いということが、だんだん分かってきていると私は認識している。
そのことを考えると、やはりこちらが思ってもないようなことを押し付けられたわけではなくて、戦争の悲惨なことを踏まえた反省として、憲法の前文では普遍性ということをすごくうたっているわけであり、やっぱりそれを踏まえた憲法の下で、とにかく続いてきた天皇をどう生かすかということを考えるべきであるので、単にそれが 1700 年続いたから憲法のそういう経緯や理念を曲げてというか、あるいはそれを無視してでもそれを守らなきゃいけないということではないのではないかと思う。
先ほど申し上げたが、憲法制定時というか、皇室典範制定時の政府側の見解を見ても、実は新しい憲法の理念上は女系を否定する積極的な理由はないと言っていて、国民に理解されればそれはあり得るのではないかということを言っているわけで、そういう意味から言っても、やっぱり憲法を越えた理由でそれを考えるということはあまり好ましくない。そのときの状況に応じて天皇というものも推移してきているとむしろ考えたほうがいいと思うので、1700 年の伝統があるから男系を維持しなきゃいけないという意見には、あまり説得力がないのではないかと私は思う。

・ 突拍子もない質問かもしれないが、先生がおっしゃるような皇室の自由度を高めるということになると、例えば外国の方と恋愛結婚するという時代が来るかもしれない。仮にそれが海外の王室の方なら、その王室の王統もつながっていくというようなことも可能性としては考えられるし、必ずしもお相手が日本人とは限らなければ、多様な文化の融合もあり得る。
その場合、憲法で規定されている「日本国民の総意」をいかに実現するかという具現化としての役割が、もう少し広い地球市民のようなところになっていくかもしれないと思うが、その辺りのことはどうお考えか。
・ そもそも今の憲法の前文を考えると、偏狭の日本主義みたいなのはもうやめようということもあり、それからやっぱり国際協調でやっていかなきゃいけないんだということも、はっきり言っていると思う。
そういう中での皇室であるので、例えば将来、これは皇室の男性の方だってもちろんそういう可能性もあるし、女性の方も両方あると思うが、それはだから、実は憲法の理念に反していることではないので、ただ、今まで例がないので最初どうするかということは当然議論になると思うが、それはやはり国民がどう思うかというところで決めていけばいいし、例えばさっきも出てきたような憲法を越えた伝統みたいなことでそこを議論するのは、筋がちょっと違うだろうと思うので、憲法の理念的には多分それは否定されることではないので、あとは実際、みんながどこまでそれを理解できるかというところにかかってくるのではないかと思う。

以上の意見陳述及び意見交換の後、座長から謝意を述べ、古川氏からのヒアリングを終了した。

(5) 本郷恵子氏(東京大学史料編纂所所長)からの意見陳述及び意見交換

資料5 : 本郷 恵子 東京大学史料編纂所所長 説明資料(PDF/325KB)

ア 意見陳述

座長からの紹介の後、次のように本郷氏から意見陳述があった。

私は御承知のとおり、日本史の、中世史の研究者であり、古代から中世に至る天皇の在り方を考えるというのが専門である。だから、その専門分野を踏まえての、問いをいただいたものに対する回答である。私、ここ100年のことはよく知らないというふうに皆さんに言っているが、必ずしも今日の天皇とか、皇族の方々の在り方に直結するものとならないかもしれないが、その点、御理解いただいた上でお聞きいただきたい。

まず、問1だが、天皇の役割や活動についてどのように考えるかということだが、天皇の権力というのは一体どういうものかというのはとても難しい問題であり、必ずしも政権の主役として活動してはいなかった。一方で前近代を通じて、官位制度だとか、それから儀礼とか行事の体系というのが、これが営々と継承していかれたと。その継承するための根拠とか、淵源というのはやはり天皇にあるであろうというふうに考えるわけである。

この官位制度というのは近代以降も、例えば太政官とか、それから、大蔵省なんていうのは多分一番長く続いた名称だと思うけれど、そのようにして継承され、それから叙位叙勲制度なんかにも受け継がれているというところがある。それから、儀礼や行事というのも、例えば平成から令和に当たってのいろいろな儀式があったが、その際にずいぶん以前の、本当に歴史的な前例が参照されたということなんかを考えていただければ、いわば、時空を越えた有効性みたいなものを持っているというようなところがある。

ただ、天皇をめぐる伝統というふうに皆さんおっしゃるが、必ずしも不変のものとして踏襲されているわけではない。天皇の営為に関連して言及されたり、検討され、古いものでも何でも全部フラットな価値を持った前例として持ち出されることによって、繰り返し思い出されて、非常に実践的な価値を持ち続けているというところがある。

天皇とは、まさにこのような文化的な一貫性というものを体現している存在ではないかというふうに考えている。

ただ、一方で、鎌倉幕府の成立以来、武家政権の成立ということだが、天皇とか天皇をいただく公家政権というのは、権力という点では完全に武家政権に凌駕されて危機的な状況に陥っているわけである。本当にこのままでは滅びるんではないかというような危機も多々あったわけだが、それにもかかわらず、武家の政権が次々と滅びていくのに対して、天皇は今日まで残っているわけである。それは一体なぜかということについては、必ずしも歴史学としては明確な答えを出せていない状況である。

すなわち天皇とか天皇制というのは、常にもう既にあるもの、おのずからあるものというような形で、その存在意義とか、一体なぜこれが残っているのかということを、きちんと検証されないまま続いてきたというところがあるんではないかと思う。

今の段階で皇位の安定的な継承が問題となる、非常に危機的な状況にあるわけだが、この事態をめぐって国民としての本格的な議論を展開するということは、たぶん非常に大きな意味を持っている。ここで本気でやるということが、我々全員にとってとても大きな意味を持つんではないかと考えている。

問2の皇族の役割や活動についてどのように考えるのかというのは、これは天皇の位を継ぐ人の血統継承を保障する親族集団であると同時に、天皇を支えて公務の一部を分担する。現在のように皇族の絶対数が減っている状態では、何らかの対策を講じなければいけないであろうということである。

次のお代替わりへの時間的な余裕があるうちにというふうに書いたが、ただ女性皇族の御結婚ということを考えると、そんなに時間的余裕もないかなと思うので、やはり速やかに議論を尽くすということがとても大事だろうと思っている。

女性皇族が婚姻に伴って皇族の身分を離れることについては、皇族の規模としてはあまり増やしても困るというようなことがあるので、非常に明確に性別で分けて、男子は残るし、女子は離れるというふうに明確に分かれているのは、それによって皇室の規模が一定に抑えられるという、この効果はとても大きいと思う。

ただ、今回それをやっていては誰もいなくなってしまうだろうということであるので、内親王とか女王に皇位継承資格を認めることは、もうこれは自然な流れではないだろうか。単純にいなくなってしまうというだけではなくて、現在の社会的な状況、男女をめぐる、女性の社会進出とか、家族に対する感覚というものを考えれば、やはり女性にも皇位継承資格を認めてよろしいんではないかと。その場合に継承順位は最も分かりやすいやり方で直系長子優先というのがよろしいんじゃないかと思う。

女性が天皇につくことはいかがなものかという議論もあるかとは思うが、実際に女性天皇の例はあり、それから、一般の例えば大臣とか、大納言のような政治的な役職に女性が就くという例はないわけである。みんな男の人ばっかりがやっている。一方で天皇については女性がつくというケースがあるというのは、これはやはり見るべきところであり、天皇というのは公的な役割であるとともに、ある血統を備えた体や生理そのものでもあって、必ずしも女性を排除するというわけではないだろうということである。さらに、天皇家のいろいろな継承に関して内親王とか女院といわれるような女性が、非常に大きな役割を担ったという事例もあるので、女性が天皇位につくことについては、一定の根拠を持つものと考えてよろしいだろうと思っている。

皇位継承資格を女性に拡大するという場合に、私としては最もシンプルに、女性に皇位継承資格を与えるのであれば、男性皇族と全く同じ処遇で臨めばよろしいんではないかと思っている。だから、皇位継承順位についても、男子がいない場合に女子がということではなくて、男女を問わず長子優先ということで考える。

それから、もちろん女子、女性皇族が結婚された場合にはその御家族も全て皇族とするという、完全に男性皇族と同じ扱いにするというのが、論理的に言って筋道にかなったやり方であろうと思う。

それで、天皇の役割ということを考えると、それはもう平成の天皇がおっしゃったように、まさに全身全霊をもって臨むべきものということであるから、早い段階で皇位継承者としての自覚を持ち、そのような養育をされることが望ましい。それから、国民としても、この方が将来天皇になるんだということを、早い段階で認識するということはとても大事だろうと思われる。

早くからそういう自覚をお持ちになるということが、本当に今日の日本において家元制とかいろいろあるとは思うけれど、完全な世襲が行われるのは天皇のみであると思っている。生まれたときから天皇として運命付けられて、それ以外の生き方は考えたことがありませんというような、そういう生き方をしてきたという事実そのものが、やはり無二の存在感と説得力につながるんではないかと考えている。

女性天皇は例があるが、女系による皇位継承というのは先例のないことではあるが、やはりそこのところは一つ、一歩踏み出すということについて、本当に合意とか理解が取れるのであれば、今までの伝統を更新して、その価値を再認識するというのは非常に大きな意義を持つのではないかと思われる。

それから、問7。内親王や女王が婚姻後も皇族の身分を保持するということだが、その場合は、御家族もみんな皇族とする。ただ、それを全員に敷衍すると、やはり皇室の規模が拡大し過ぎるという問題はあるので、それはもう適宜、男女問わず皇籍を離れるという選択肢についても、非常に柔軟に考えていけばよろしいのではないかと思う。その点はそれぞれの方の御判断とか、いろいろな問題あろうかと思うが、この点についての運用はまた考えていただいてというふうに思っている。

それから、元女性皇族が皇室の活動を支援することというのは、これは特別職の国家公務員として皇女という資格で、皇室の活動を担ってもらうというふうな報道がされているようだが、これは、皇族というのは職業ではなかろうということである。皇族とは与えられた運命なんだろうと思うので、それをある種の職業のように扱うというのは、本当になじまないのではないだろうか。そのような形で皇族としての活動をしても説得力がないんではなかろうかと思う。そのような半端な扱い方をするのではなくて、皇族としての活動が必要なのであれば、皇族の地位にとどまっていただくというのがやはり筋であろう。

それから、皇統に属する、おそらく旧宮家に連なる男子の方に皇室にお戻りいただくという可能性であるが、既に旧宮家の離脱以来70年以上が経過しているわけで、そういう方たちに戻っていただいても、単に皇統に属する男子というだけでは、現在いらっしゃる女性皇族を上回る説得力を持つとはちょっと思えないということである。

それから、先ほどの職業としてやるというようなこととも通じるが、やはりたくさんいる中から何らかの選択をしてお戻りいただくということになる。全員に戻っていただくというわけではないであろうから。そういうことも皇族とか皇室にはなじまないんではないかというふうに考えている。

最後の安定的な皇位継承を確保するためということだが、これはもう今まで申し上げたとおり、男系男子優先というのを改めて、男女を区別せず直系長子優先で継承していくということが、最もシンプルであり、納得のいく解決方法ではないかと思われる。女性皇族についても男性と同じような処遇をするということである。

ただ、やはり問題なのは、皇籍を離れるという選択についてどのように対応するかということである。その辺は運用が難しいかとは思うが、これは今後お考えいただくということになるかと思う。

皇位継承というのは分かりやすい方法でやらなければいけないだろうというふうに考えている。伝統だからということで男系男子にこだわって傍系への継承が繰り返されることになると、当然継承の流れは複雑化するわけであり、そのたびにたぶん何らかの問題が起こってくる。関係するいろいろな皇室の方々について、それぞれの方の資質だとか、このようなお振る舞いはどうであろうかというようなことがいちいち取り沙汰される。例えばそれぞれの宮家の家庭の在り方とか。あんまり踏み込んだところまで面白おかしく取り沙汰されるというようなことは、やはり避けたいところではないかと思う。天皇という存在への信頼が失われることになってしまう。

とにかくシンプルにして、次世代とか、それからその次の世代への見通しが明確なものとして皆さんに見えるようにしておくということ、それで、それに従って粛々たる継承が行われるということが一番望ましいんではないかと思われる。

もちろんそれぞれの方の資質とか、能力とかというのはあると思うが、不足があるならそれを補うような人材を周りに配置すればいいことであって、そういうことが世間的にいろいろ言われるような事態は避けたいところである。

最初に申し上げたが、天皇制というのは明確な検証を経ないまま続いてきたというふうな印象を、私としては持っている。一体どうして続いてきたのかということについて、歴史学としてはなかなかお答えができないところである。

この機会に、今までにはなかったことではあるが、この危機的な状況を乗り切るために、女性とか、女系への継承資格の拡大について、新しい方法を決定できる、それについての合意とか共感というものを幅広く得ることができれば、国民としてというか、日本人として、天皇制の存続について非常に重要な決定を我々は行ったんだという、天皇制との関係において大きな自信を持つことにつながるんではないかと思っている。そういう決定をしないまま今まで来てしまっているところがあると思うので、ここで単に古いものを守るということではなくて、危機的な状況ではあるが、とてもいいチャンスというふうに考えて、大きな決定をするのはとてもいいことではないかと考えている。

イ 意見交換

有識者会議メンバーと本郷氏との間で、次のような質疑応答があった。

・ 現在の状況を踏まえた場合に、長子優先とすると皇位継承順位を変更することにもつながるかと思うが、そのことについてはどのように考えるか。
・ 私は今ある状況はこのまま進めれば良いと思っている。今ちゃんと次世代の男子がいらっしゃるわけだから、そこまでは従来の方式でやるのではないかなと思っており、他にも今現在進んでいることについては、そのまま進めてしまってよろしいと思っている。
したがって、もちろん女性宮家の問題というのは今判断しなければいけないとは思うが、天皇のお子さんの継承順位についてどうするかということは、次の世代で実現すればよろしいかと思っている。
今すぐ継承順位を変えるんであれば、私はお代替わりのときに判断しておくべきだったと思う。もう遅過ぎるんじゃないかというふうには思っている。それについては、いろいろ御意見があるとは思うが、できれば早い段階から天皇になる方は、それなりの立場というか、そういう気持ちでいていただかないとお気の毒だろうと考える。私としては今進められるものは進めていけばよろしいと思っている。

・ 我々が皇室というものを考えたときには、天皇陛下を中心として、皇后陛下や御家族の方々をトータルで見ているように思う。悠仁様が天皇になられたときに、支える皇族方がもう少しいらっしゃらないと、悠仁様も厳しい環境に置かれるのではないかと考えるが、そのあたりの方策について、何かお考えはあるか。
・ このままだと悠仁様お1人になってしまうので、やっぱり今いる女性皇族の方たちの中から、宮家として残っていただく方が何人かいてほしいところである。
ただ、どなたが外に出られて、どなたが残るのかというのは、いろいろ難しいところもあろうかと思う。天皇との血統の近さで決めるという方法もあるかもしれないが、今のところ絶対数が少な過ぎるので、あまり細かいところまで詰めてしまうと、先々どうなるか分からないので、ある程度考える余地を残しておくことは必要かと思う。
ただ、天皇をサポートするような方たちを一定程度残しておかないと、こういうことを言っていいのかどうか分からないが、悠仁様の御結婚にも差し支えるというか、あまりにも不安でお嫁になんか来られないというようなことがあるんじゃないかと思う。やっぱり大変な御決断になるだろうから。今から、サポート体制が整っているということを示せるような状態をつくっておくことは、とても大事なのではないか。

・ 皇族の方々の数が少なくなるという問題に対して、一定の規模を保つというのが先生の一つのキーワードだったと思うが、具体的にはどの程度を一定の規模とお考えか。
・ それは難しい。だから、将来の継承に国民全体が不安がないと思えるくらいとしか申し上げられない。例えば戦前は伏見宮家の系統の宮家が増え過ぎたというようなこともある。その頃は、結果としては男子については、ほぼ全てお認めして宮家にしていた。ただ、戦後は男性皇族の数があまり多くならなかったので、実はその問題は本気で考えられたことがない。だから、それも今後の運用上の課題ではないかと思う。継承に関わる方針が定まったところで、細かい点については詰めていただかなければいけないところがたくさんあるんじゃないかと思う。
そういう点について、平成17年に、女性天皇の可能性について本格的に検討したときの報告書が出ており、非常に助けになる内容だと思う。もう1度その報告書を検討し直すことは、とても大事なのではないか。

以上の意見陳述及び意見交換の後、座長から謝意を述べ、本郷氏からのヒアリングを終了した。

(6) 第4回会議における有識者ヒアリング対象者

資料6 : 第4回会議における有識者ヒアリング対象者(案)(PDF/158KB)

資料6「第4回会議における有識者ヒアリング対象者(案)」 について、事務局からヒアリング対象の候補者の紹介を行い、資料6に記載の4名の方からヒアリングを行うことを決定した。

(7) その他

・第2回会議においてヒアリングを行った新田均氏(皇學館大学教授)から補足説明資料の提出があったため、配付した。

参考資料: 新田 均 皇學館大学教授 補足説明資料(PDF/175KB)

・第4回会議については、5月10日(月)16:45 から開催することとなった。

 

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