私たちは、皇室の伝統的な男系継承を確保する「養子案」の早期実現を求める活動を進めています

政府が検討している皇室制度改革に対する私たちの見解 -皇室の伝統を踏まえた国民的論議を-(平成24年5月30日)

声明・提言活動報告

今、政府は、皇室のご活動の安定を図るため、これまでなかった新しい皇室制度である「女性宮家」の創設を検討しています。野田首相や藤村官房長官の公式発表に基づくと、次のような内容です。

①女性皇族が一般民間人男性と結婚されても皇室から離れなくても済むよう、「女性宮家」の創設を検討する。
②「女性宮家」は皇位継承と切り離して検討を行なう。
③平成十七年の「皇室典範に関する有識者会議」報告書を前提に検討を進める。
④緊急性の高い問題なので早急に結論をだす。

以上の政府の皇室制度改革に関して、私たちは次の見解を表明します。

「女性宮家」創設は皇位継承と切り離せない問題です

政府が「女性宮家」の創設の検討に入りましたが、女性皇族の配偶者を皇族とするか否かが、重要な検討事項となります。今回の政府の公式発表を踏まえれば、平成十七年の「皇室典範に関する有識者会議」報告書と同様、配偶者は皇族とするとの結論を導くものと思われます。

その場合、お子様は皇族でなければ不自然であり、もし皇族となられれば、次に皇位継承権を与えるべきか否かという重大な問題が生じてきます。したがって「女性宮家」創設は、皇位継承問題と切り離せない関係にあり、政府には慎重な検討が求められます。

一般民間人男性が皇族になることは歴史上かつてなかったことであり、皇室の将来に重大な影響を及ぼします

政府の進める「女性宮家」の創設とは、女性皇族が民間の方と結婚されても皇室から離れなくても済むよう、皇室典範を改正することです。この制度では、女性皇族の婚姻のお相手が一般の民間人男性となることが想定されています。一般の民間人男性が皇族となることは、歴史上いまだかつて一度もありませんでした。

さらに、その一般の民間人男性との間に生まれたお子様に皇位継承権を与えることになれば、女系天皇への道を開き、二千年以上続いてきた万世一系の伝統とは異なるものとなります。また、一般の民間人男性が皇族となれる制度を導入すれば、世俗的な争いに皇室が巻き込まれることも起こり得ます。これは、皇室と日本の将来にまでかかわることであり、このような重大な問題について性急な結論を出すことは厳に慎むべきです。

憲法第二条の「世襲」規定は、皇位の男系継承を意味するとされてきており、その変更は憲法上の大論争を招きかねません

現憲法第二条において、「皇位は世襲のもの」と規定されています。この「世襲」の意味について、憲法制定議会では金森徳次郎国務大臣が、繰り返し明治憲法と同様に「男系」を意味すると答弁しており、その後の政府見解も一貫して「男系による世襲」と説明してきました。また憲法学界も一般に「男系」を支持しています。

それゆえ、もし「女性宮家」の創設が女系天皇の容認にまで発展すれば、憲法上の大論争を招きかねません。これは実に由々しき事であり、政府にはこの点の配慮を強く求めます。

政府は、様々な選択肢を提示し国民的議論ができる環境づくりをすべきです

現在皇族方が果たされているご公務を、将来まで安定的に維持・分担していくための方法については、様々な観点から検討する必要があります。「女性宮家」の検討に加えて、現在の女性皇族の方々が結婚して皇室を離脱した後でも、皇族に準ずる立場からご公務を担うことができる方法も考慮すべきでしょう。また、現在の皇室に若い世代の男子皇族が少ないということからすれば、皇統の血筋を受け継ぐ元皇族の男系男子の子孫の方に、皇族の身分を取得していただく方法も検討する必要があります。

実際、三笠宮寛仁親王家の長女である彬子女王様は、新聞紙上でのインタビューで次のように発言されています。「今の議論は女性宮家を創設するかしないかのみになっているような気がして、そこには違和感があると申しますか…。男系で続いている旧皇族にお戻りいただくとか、現在ある宮家を養子として継承していただくとか、他に選択肢もあるのではないかと思います。女性宮家の議論だけが先行しているように感じられます」と。彬子女王様のご発言は、当事者としてのお立場にあるだけに重要な意味を持っています。

様々な選択肢を国民全体で論議していく環境を作っていくことこそ、政府のとるべき道であると思います。

万世一系は皇室の伝統であり、私たち国民にはそれを守る努力が求められています

今日、圧倒的多数の国民が、国家及び国民統合の象徴として皇室が繁栄し永遠に続くことを願っています。このことは、各種世論調査でも明らかであり、今回政府が進める皇室のご活動の安定を図る制度改革への国民の支持も、同じ趣旨であると言えるでしょう。

そもそも皇室が永遠に続くことは、神武天皇以来、百二十五代続いてきた万世一系の伝統が、将来にわたって続いていくことを意味しています。皇統の危機は、歴史上幾度もありましたが、その都度、皇室と国民の英知で乗り越えてきました。それは、万世一系の天皇の権威のもとに、国民の団結の求心力を守り続けていくことが国家・国民にとって最も大切なことである、と国民が深く認識してきたからです。今回の東日本大震災において示された天皇陛下の御聖徳によって、被災地の人々は大きく支えられてきました。

かつて昭和天皇は、「日本の皇室は昔から国民の信頼によって万世一系を保っていたのであります」と述べられました(*)。「国民の信頼」の「国民」とは、二千年以上にわたる国民の全てを意味しています。現在に生きる私たちにも、万世一系を守る一層の努力が求められているのです。

(*昭和52年8月23日那須御用邸宮内記者会にて)

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